開発者でも特許成立までの流れは分かっておく必要が有ります。出願後の扱いを知財部や弁理士の先生と話をするときに、流れを理解していないと話が通じないところが有ります。
極力わかりやすく説明しますので、ぜひ最後までお読みください。何か分からないことが出てきた時にこのページを見ていただくのも良いと思います。宜しくお願いします。
特許成立までの流れ(日本国内の出願の場合)
出願
出願は先願主義です。
同じ特許が出願された場合、先に出願された方に特許の権利を与えるもので先願主義と呼ばれています。
アメリカが2011年の法改正で先願主義になりましたが、その前は先発明主義が取られていました。今は、特許=先願主義、と思っていただいて良いと思います。
公開
出願から原則1年半で特許が公開されます。(公開特許公報)
公開しないで特許を取りたいという方もたまにいますがそれは出来ません。早期審査で公開前に登録になる事もありますが、その後で結局公開されます。
また、公開前に出願を取り消すことは可能ですが、公開前に取り消すと公知(不特定多数の人が公然と知りえる状態)になる前に取り消しているので後願排除にもなりません。
審査
審査請求
特許は出願しただけでは審査してもらえません。特許の権利を得たいのであれば、出願から3年以内に改めて審査請求を行う必要があります。
公開された後に、権利化するのは難しそうなので取り下げても、最悪、公知の状態になっているので後願排除の役割は果たせます。
拒絶理由通知/意見書・補正書(中間応答)
特許庁が審査を行い、特許に該当しないと判断されるとその理由が通知されます。受けた方はそれに対して、特許の内容を補正して意見書として返します。一般に中間応答といった言い方をします。
拒絶理由通知書の応答期間は通常60日以内であり、意見書で修正が出来るのが基本的に2回までです。
登録
特許査定を勝ち取っても、登録料を納めないと認定登録にならないので、特許権も発生しません。
その後も年金と称した特許維持費を納める必要があり、納めないと権利維持を諦めたとみなされ、登録を取り消されるので注意が必要です。登録が済むと特許公報として公開されます。
中小企業向けに手数料の軽減処置(減免制度)があります。詳しくは特許庁のホームぺージを参照ください。
特許成立までの流れ(外国に出願する場合)
特許は国が違えば特許法も多少異なります。特許を出したい国に直接出願する必要が出てきます。
ただし、その国の言葉で出願する必要があり、出願日も各国の特許庁に出願した日になってしまいます。
そのような問題を解決するためにPCT(Patent Cooperation Treaty/特許協力条約)を使って出願する事が出来ます。
外国も一ヶ国なら直接出願しても良いかもしれませんが、PCTを使うと色々なメリットがあります。
ただし、PTCに加盟していない国は当然PCT出願はできません。身近な所では台湾はPCTに加盟していません。
よって、台湾は、台湾の特許庁に直接申請しなければならないので注意が必要です。ただ、有難い事に台湾はパリ条約には加盟しているので、日本と同じように、優先権は主張できます。
優先権については記事にしていますので良ければ参照ください。日本国内の出願のみであれば、補足事項が無ければ優先権は主張する必要がありません。
外国出願を考える場合、優先権を主張すれば、1年間、外国出願が必要か否か検討する事が出来ます。外国出願を考えるのであれば優先権を主張した方が良いです。
直接出願
日本の特許庁に出願するように、例えば中国やアメリカなどの特許庁に直接出願する事は可能です。その場合、当然、出願国の言語で特許を出願し、各国の特許法に則って、進めて行く事になります。
PCT出願
自国の特許庁に1通、自国の言葉で出願すれば、153の加盟国すべてに、その日に出願したとみなしてもらえます。
つまり、日本語で日本の特許庁に2月1日に出願すれば、アメリカや中国などにも2月1日に出願したとみなしてもらえます。
公開
PCTで出願すると、公開も自動的に行ってもらえます。
公開は、「日本語、アラビア語、中国語、英語、フランス語、ドイツ語、ロシア語、スペイン語、韓国語、ポルトガル語(「国際公開の言語」)*」で出願されたPCT国際出願については、その言語で公開されます。それ以外の言語で出願されたPCT国際出願は、出願人が翻訳した国際公開言語で公開されます。
国際調査結果
公開の時に特許の調査結果(国際調査結果)が公開公報の一番後ろに添付されます。具体的には以下のような形で添付されています。
部分的に拡大したのが下の絵です。
特許化できる可能性が著しく低い場合は特許化を諦めるなり、対策を練ったうえで、権利化を目指すなり、参考になる調査結果を添付してもらえます。これはPCT出願の大きなメリットになります。
国内移行
PCTで出願した後は特許を取りたい国ごとに、その国の言葉に翻訳して特許を出し直す必要が有ります。これを国内移行と呼びます。
国内移行はPCT出願の場合、優先日から30カ月以内(2年半以内)に実施すれば良い。という大きなメリットがあります。
外国の国に出願する場合は当然、出願国が決まっていないと出願できません。PCTを使うことで2年半の猶予が出来、社会情勢などを視野に入れて決めることが出来ます。
審査請求
審査は各国で個別に審査する必要があり、PCTで出願しても、審査請求は各国に個別に実施する必要があります。
その期限は日本の場合は出願日から3年以内ですが、国によって期限の違いはあるようです。
審査請求以降
各国の特許法にそって進むことになります。
PTC出願のメリット/注意点
パリ条約
パリ条約とは、工業所有権(特許・実用新案・意匠・商標等)の保護に関して同盟を形成する条約です。日本の出願と同様に優先権を主張することが出来ます。
身近な所では台湾がPCTに加盟していません。
ただ、パリ条約は結んでいますので優先権を主張して台湾の特許庁に台湾語(繁体字)で直接出願する必要があります。
まとめ
- 国内出願
- 先願主義なので同じ特許であれば早く出願した方に特許が与えられる。
- 出願から1年半後に自動的に特許は公開される。
- 特許として権利化したければ出願から3年以内に審査請求を行う必要が有る。
- 審査を経て特許が成立すると、登録料を支払うだけでなく、その後も特許維持費を納める必要が有る。
- 外国出願
- 外国に出願するのはPTC出願が便利。(ただし、台湾はPTCに加盟していない)
- PTCは出願のみ、審査請求は各国の特許庁に個別に出願(国内移行)と審査請求を行う必要がある。
- 公開公報に国際調査結果もレポートしてもらえる。といったメリットがPCT出願にはある。
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