心理的安全性とは自分の考えを自由に発言できる安心感の事を言います。
逆に言えばこんなことを言ったら無知、無能と思われないか?否定的だ、やる気がないと思われないか?邪魔していると思われないか?といった対人リスクを恐れて安心して自分の意見を言えない状態の事を心理的安全性が低いと呼びます。
Googleの社内調査で「効果的なチーム」に必要な要素は何かを調査したところ、この心理的安全性が高い事が大切であることが判明しました。
調査の概況は以下のサイトで公開されています。
私は、腹を割って話が出来る。何でも話が出来る。こういった言葉の方がしっくりくると感じてます。信頼関係の構築がすべての基本、土台、という昔から言われている事を改めてGoogleが示してくれたものと思っています。
Google調査結果
上記のGoogleのサイトを簡単に要約して紹介します。
ここで、マネージャーとはチームを管轄する人を指しているようです。
一方、それほど影響しない項目として以下の項目が挙げられています。
チームメンバーの働き場所/合意に基づく意思決定/メンバーが外交的であること/個人のパフォーマンス/仕事量/先任順位/チームの規模/在職期間
心理的安全性や相互信頼が大切というのは「なるほど」と思いましたが、個人のパフォーマンスや合意にも基づく意思決定がそれ程影響しないと言うのは意外でした。
チームはメンバーが相互に強く依存しながらプロジェクトを遂行するとしている事から、すべての仕事には当てはまらないと思われます。また、Googleの社内事情もあるでしょう。この結果に反する調査結果も社外にはある旨サイト内にも記載されています。
具体的に信頼性を構築し心理的安全性を高めるために大切にしなければならないと私が思う事を5つ紹介して行きます。
その1、相手の話をよく聞く。
心理的安全性を構築するためには、信頼関係をしっかり構築することが大切になります。そのためにはしっかり傾聴することがMUSTになります。
傾聴は、信頼関係構築のための基本です。
傾聴を図式化したのが上記の図です。
傾聴する上で、聞く側に求められる態度として、受容、共感、自己一致が大切と言われています。
聴き手が受容、共感、自己一致の状態でいて、なおかつ、それが相手に伝わると、大きな安心感を相談者は感じることになります。
考えてみてください。自分で自分の事を受け入れられて、心から自分に共感出来、思っている自分と実際の自分が一致していれば悩みなんかなくなるはずです。
聞く側も相手の理解が深まり、信頼関係が構築されることになります。
受容、共感、自己一致に関しては別途記事にしています。良ければご覧ください。
その2、相手の思いを受け止める
心理的安全性を高めるには、メンバーの事を良く知る事は大切です。良く知るといっても、プライベートでも仲が良いなどもあるでしょうが、仕事をする上では、やはり仕事に対する思いを特に上司は受け止める事が大切だと思っています。
まずはリーダーから始めないと、メンバーには浸透しません。相手が本当にやりたいと思っている事が何なのかよく理解してしっかり受け止める事が大切だと思います。
メンバーには自己開示も大切で、よく弱みを見せる事も大切とありますが、そのためにはやはり心理的安全性が必要であり、順番は気を付けるべきと思います。
- 部下が仕事や人生で大切にしている事、価値観を分かっていますか?
- 部下の貢献によって支えられている「目的」「ビジョン」を伝えていますか?
- 部下が自分で伸ばしたいというキャリアを分かっていますか?
- 部下の職場での人間関係等の悩みを分かっていますか?
伸ばしたいキャリア、やりたい事。と言われても単純に現実から逃れられるためだったり、友達を見てて影響されて自分もやってみたかった事だったり、本当にやりたいのに才能が無いとあきらめているだけだったりします。また、実際の仕事でやらなければならない事だったりもします。
そのため、傾聴の他に自問自答を通して部下に深堀してもらう事が大切です。
深堀することで、やりたい事の守備範囲は広がります。一方、会社の方は会社のビジョンを個人個人の役割まで細分化するとやはり守備範囲は広がります。
個人の欲求と会社との共有部分を見つけて、出来るだけ広げる事が、大切になります。
この考えを図式化したのが下の図です。
その3、勇気づけ
元々、アドラー心理学の人間は対等の関係なので、ほめてもいけない、叱ってもいけない。生きて行く上で困難な事は一杯あるが、すべて、自分の力で、自分の責任で進んでいかなければならい。周りの人間が出来るのは、勇気づける事しかできない。との考えから来ています。
勇気づけるためには、相手を尊敬することが前提とアドラーは言っていますが、これは、他でもない、受容、共感の事と理解しています。そのうえで、肯定的なFeed Back+有難うです。相手の貢献、存在を認めることに繋がります。
浅学の私が書くより、アドラー心理学の本は色々出ていますので、そちらを参考にしてください。
信頼関係をより強固にするには日々の勇気づけが大切だと感じています。
勇気づけはどうすれば良いか?
以下、具体的に説明して行きます。
感謝を忘れずに
日頃から、感謝の気持ちを持って、有難うと感謝することが大切になります。良く言われている事ですが、忘れてしまいがちです。
逆の見方をすると、有難うの反対は”当たり前”です。今こうして、自分が生きている事は当たり前でしょうか?あなたの部下が、毎日会社に来てくれるのは当たり前でしょうか?
そう考えると、色々な事が感謝しやすくなると思います。
成長に目を向ける。
成果をないがしろにするというわけではありません。成果よりも成長に目を向けるのです。
例えば、失敗した相手に対しては残念だったね。けど、○○が出来るようになって成長したよね。次はどうすれば良いか一緒に考えよう(成果)といった感じです。
成果に着目すると、上手く行かない場合の方が殆どです。そこで、相手の成長に目を向け、肯定的な承認を行い。相手のやる気をまず引き出すのが大切です。
成果に関しては、何故できなかった?何がダメだった?と原因追及、過去の問題に焦点を当てるのは勇気をくじくことになります。
成果に着目させるのであれば未来です。次はどうすれば良いか考えようです。
仕事の進め方は、何がいけなかったか、検証したうえでどうするか考える事も大切ですが、次、どうするか、考えるときに自然と現状を振り返ります。その時に議論をすれば良い事で、初めから成果が出なかったことの原因を考えるのは順序が逆と思います。
出来る事。出来た事に着目する。
機会や仕事の進め方は原因を追究し直す必要が有りますが、人の場合、意識を向けた部分がクローズアップされ、認識するようになります。出来ない所を指摘するとそこに意識が向き、自己防衛や否定的な感情を誘発しやすくなります。
相手の直して欲しい所を指摘するのではなく、本当にたまにでも好ましい行動をとった時に、○○してくれて嬉しかった。助かった有難う。と伝えることが大切になります。
承認する。肯定する。
個人の持ち味と潜在力に焦点を当てて、承認、肯定することになります。何か、行動して生じた結果を承認するだけでなく、「OK!」 「そう、その調子!」 など行動そのものを承認する事も大切です。
また、相手の存在そのものも承認することが大切です。具体的にどうするかと言えば、こちらから挨拶をする、名前で呼ぶ。(ちょっといい。ではなく、○○さん、ちょっといい)です。
参考図書:自分を勇気づける技術 岩井俊憲 同文館出版
その4、上手に叱る。
相手の行動を指摘し気づかせる。
仕事をする上では、肯定的に褒める。だけではやはり成り立たないですよね。叱る場合も当然必要になります。
参考図書:NLPの基本がわかる本 山崎啓史 日本能率協会マネージメントセンター
何があった?は単純に状況を聞いているだけですが、状況を説明しながら、相手の考えがまとまり、何が悪かったが気が付き、次からこうします。と言ってくるかもしれません。そうなれば叱る必要は無いですよね。
それでも、相手が何が問題か気が付かなかったら、実際にどんな行動が何故問題だと、あなたが思っている事を具体的に伝え、考えさせましょう。人間は自分で考えて出した結論に対して納得しやすいと言われています。
また、しかるのは、その事実が発覚した直後に叱るのが大切です。後になれば、それだけ相手に響かなくなります。
Who、Whyを承認するとは、相手を肯定的に承認し、正すべき行動を指摘する。という事です。その時だけ、取ってつけたようにほめても効果薄です。
日頃から、勇気づけのコミュニケーションをとっている事が大切です。
相手の言い訳をしっかり受け止める
これに関しては、失敗学実践編(日科技連出版社、浜口哲也氏・平山貴之氏)をお勧めします。以下はこの本からの引用となります。
相手が「言い訳」をしてきたら、その内容はしっかり受け止めましょう。嘘や、誤魔化しの「言い逃れ」は別にして、相手の行動の動機、原因追及に繋がります。
正しいと思って実施したミスの対策
対策は、薬を配るときはよく確認し、薬を間違えて手渡した時はすぐに薬を回収するよう、再度関係者に教育を行った
これで大丈夫か?
言い訳:なぜその行為が正しいと考えたか?
その動機的な原因は
- 「Bさんですね」って聞いたら「はい」って言ったんだもん。
- お顔をみてBさんだと思ったんだもん。
であった。
つまり、
動機的な原因は言い訳であり、だって○○だったんだもん。といったフレーズがしっくりくるかどうかが大切。この言葉がしっくりこないものは、動機的原因にならない。
否定形は結果論
原因に否定形の事が原因として書かれているのは、すべて、対策を先に考え、それを反転して原因としているだけ。マニュアル、標準書が無かった。ルールが決められていなかった。不明確な指示だった。確認不足だった、等
動機的原因は「○○だから××した。」など、肯定的な表現であり、素直にBecauseでつながる表現にすることが大切である。
その5、人と事を切り分ける
議論においてもメリット/デメリット/上位のミッションから最善と考えられる方法を議論するのが良いとされています。その事を概略図で示したものが下の図です。
参考図書:理論が伝わる「議論の技術」、倉島 保美(Blue Backs)
- 人格や価値観を否定するのはいけない。
- 議論ではメリット/デメリット/上位ミッションから考えないといけない。
人と事とは分けて考えないといけないと頭では分かっていてもついつい「イラっ」として言わなくても良い事を言ってしまうことは無いでしょうか?
すでに述べたように、次はどうすれば良いか?といったように未来に目を向ける事も大切です。
しかし、人間には感情が有るので、議論や、叱るような場合は、極力感情、(とくに怒りの感情)はコントロールすることが大切になります。
怒りの感情をコントロールする
これに関しては記事にしているので是非参照してください。
以下のようなことが大切になります。
- 深呼吸しながら6秒間待ってゆっくり話す。
- 可能ならその場を離れたり、自分を客観視する。
- 過去を振り返り、自分の怒りの傾向を知る。
- その時の自分の考えを振り返り、それ程、重要な事だったのか、自分で変えられるような事なのか振り返り、許せない領域を狭くし、境界を意識できるようにする。
- 怒りは2次感情で、怒りに先立って起こるネガティブな1次感情がある。
- 1次感情を適切な言葉で相手に伝えるのが望ましい。
- 「モヤモヤ」が解消されない場合は本当の原因は別にある。
- 相手の攻撃に向かう”負の怒り”と自分を中心に怒りをとらえる”正の怒り”がある。
- 負の怒りを正の怒りに変換することが大切である。
- その時には「 負の怒りを正の怒りに変換するのが良く、その為には、「この怒りは何の危険を察知しているの?」と自分に問いかけるのが良い。
まとめ
- 心理的安全性とは自分の考えを自由に発言できる安心感の事。
- Googleが効果的なチームを可能にする条件は何か?を調査した結果、心理的安全性が一番大切との調査結果を公表し、注目を浴びるようになる。
- 心理的安全性を高めるのに大切な事は以下の5つ
- 相手の話をよく聞く
- 相手の思いを受け止める
- 勇気づけ
- 上手に叱る
- 人と事を切り分ける
コメント