発明の種類(カテゴリー)
物の発明
新しい機能を持った機械、材料などがイメージ出来ると思います。
また、プログラムも「物」の発明とみなされます。これに関しては以下の記事がわかりやすかったので参照にしてください。
冒頭「著作権はプログラムの表現を保護し、特許権はプログラムのアルゴリズムを保護するといわれています。」と記載されています。
ソフトウエアー特許とプログラム著作権-知的財産の基礎講座 古谷 栄男
物を生産する方法の発明
物を生産する方法も特許にすることが出来ます。その場合、生産した物にも権利が及ぶので、製法から製品が結び付けられるとかなり有効です。
物を生産しない方法の発明
例えば、「新しく開発した成分分析の方法」「食品の新しい冷蔵方法」や「新しい害虫の駆除方法」「サービス業のシステム、ディズニ-ランドのファスト・パス・システム等」が該当します。
発明の種類と権利の効力が及ぶ範囲
上記の表に示したように、発明の種類(カテゴリー)によって、発明の実施(権利の効力が及ぶ範囲)が異なります。
物を生産する方法の発明の場合、その方法により生産した物も対象になります。
特許権の消尽
特許発明の実施品が、特許権者やライセンシーによって販売されるなどして適法に流通に置かれた後に、その後の小売販売などが、特許権者の許諾がないことを理由に侵害行為とされてしまうと、取引に支障を生じます。そこで、特許発明の実施品がいったん適法に流通に置かれたときは、その実施品をさらに第三者に販売する行為には特許権の効力は及ばないと解されています。
特許権の消尽(国内消尽)とは – BUSINESS LAWYERSより
特許権は強力な権利なので20年間の有効期間が有るだけでなく、適法で世の中に出たものには効力が及ばないとしたものです。
しかし、気をつけなくてはならないのは、適法で世に出たものに対して、ですからそもそも、特許侵害品として世の中に出たものを転売した場合、かりに、それば侵害品であったと知らなかったとしても特許権は残っているので注意が必要です。
特許法上の発明とは?
特許法では「発明」を「自然法則を利用した技術的思想の創作のうち高度な物」と定義しています。
自然法則を利用した技術的思想である事。
自然法則
「一定の原因によって一定の結果が得られる自然科学的な法則」
技術的思想
「一定の目的を達成するための具体的手段であって実際に利用でき、誰がやっても同じ結果が得られるもの。」
記憶術や商品の陳列方法等の精神活動を利用するもの、経済学上の法則を利用した計算方法、数学の解法・公式、暗号の作成方法やゲームのルールそれ自体等の人為的な取り決めは発明にならず、特許に出来ません。
野球の変化球の投げ方など、人の技能によるものも特許に出来ません。
また、物理化学の法則そのものは自然法則ですが、それを利用して何かを発明したわけではないので発見とみなされ、特許にはなりません。
参考文献:平成30 年度特許庁説明会テキスト・第2 章産業財産権の概要・第1 節 特許制度の概要
いきなりステーキの特許問題
専門家でも意見が分かれるいきなりステーキの特許問題(特許第5946491号)を紹介します。
特許の内容は、上記のように、非常にシンプルです、これは自然法則を使っていないので特許には出来ないと特許庁は判断しました。
ペッパーフードサービスはこれを不服として知財高裁で争い、下記のような反論で最終的に特許を獲得しました。
人間の番号に対する識別能力が高いという性質を利用することでお客様の要望に応じて焼いたステーキを他のお客様のものと混同しないように提供する。という一定の効果を反復継続して実現するための方法を示したものであるから自然法則を利用したものである。
これが、認められたことになります。専門家の間でも話題になったようです。
一般には、人が介在するシステムは特許にならない。(自然法則を利用していない)と言われます。
しかしながら、いきなりステーキの特許を見ると、人が介在しても、誰がやっても同じ効果が継続的に期待できるのであればトライしてみると良いと思います。
創作である事。(発明と発見は違います。)
単に既存の物を見つけ出したに過ぎない物は「単なる発見」であって、「創作ではなく、発明とは言えません。」ただし、天然に有った物から、人為的に操作して精製した化学品のようなものは発明になります。物理化学の法則や、数学の公式も発見になります。
高度な物
考案と区別するために入っているだけで、発明に該当するかどうかに関しては意味が有りません。
特許要件
産業として利用できる事
特許法の目的が産業の発展に寄与するですから、産業に使えない発明は特許に出来ません。
- 人間を手術、治療または診断する方法の発明(医療機器、医薬自体は物の発明になり特許化可能です。)
- 業として利用できない発明。(個人的に利用される。あるいは学術的、実験的にのみ利用される等、無償/無償は関係ありません)
- 理論的には発明の実施が可能であっても、その実施が実際上考えられない発明。たとえばオゾン層の減少に伴う紫外線の増加を防ぐために、地球表面全体を紫外線吸収プラスチックフイルムで覆う方法
参考文献:平成30 年度特許庁説明会テキスト・第2 章産業財産権の概要・第1 節 特許制度の概要
新規性/進歩性
新しい発明、容易に思いつかない発明の事ですが、新規性/進歩性の所で紹介します。
記載要件
明細書には、その発明が再現できる程度に、発明が明確になるように記載する必要があります。他にも、特許には「方式」があり、出願すると、その方式に合っているかどうかの方式審査があります。それに合格しないと、そもそも、特許性の審査に進んでもらえません。
特許出願する際に、特許事務所は通さなくても出願できます。特許事務所を通すのは無論、お金をはらっても、その専門性が必要だからです。記載要件も特許事務所に期待する専門性の一つと感じています。発明者は通常、そこまでケアーする必要はありません。
簡単に言えば、自分で出願するのは大変です。という事です。
まとめ
- 特許には物の発明と、物を生産する方法の発明と、物を生産しない方法が特許の対象になる。
- 生産方法の特許は、その権利は生産した物にも及ぶ、
- 自然法則を利用した一定の目的を達成するための具体的手段であって実際に利用でき、誰がやっても同じ結果が得られるものである必要が有る。
- 発見と発明は異なる。特許は発明が対象となる
- 特許は産業にとして使える必要がある。
- 特許要件として進歩性/新規性がある。
- 記載要件があり、特許の記載方式が適切かどうかの審査が有る。
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