実際に特許を出願しようと思えば、やはり、特許事務所を通して出願する方が望ましいです。
私は、特許事務所を通さないで出願したことはありませんが、方式審査対応一つにしても、中間応答(拒絶理由通知書、意見書)の対応についても、やはり、その専門性に頼らないと、進まない面はあります。
知財部があり、その辺りはすでに手馴れている。あるいは何回も特許を出願したことがあるという方はすでにご存じの事と思いますが、ここでは初めて特許を出そうという方は特許事務所がどういったことをやってくれるのか良く分からないと思うので私の経験から紹介したいと思います。
出願打ち合わせ
特許事務所の方は、我々の技術の事をよくご存じありません。特許事務所さんとの最初の打ち合わせでは、技術的な説明が主になります。
ただし、会社の技術報告会のような資料を持ち出して説明しても、参考資料としては使えることは有っても、やはり特許用に開発者がアレンジして説明する必要があります。
特許事務所向け、説明フォーム
そう、まさしく、特許の出願をお願いするのですから、その明細書を書くイメージで情報をまとめて相談する必要があります。
特に5の先行例調査による引用文献の情報は大切ですし、既存技術との差は何か?その差によってどのような効果が得られたか?といった
新規性・進歩性に関する事を説明できるように準備しておく必要があります。
弁理士の先生の方からこういった先行例がありますが、この技術との違いは何でしょう?と聞かれる場合ももちろん有ります。
実施例の説明
実施例は、あなたが明細書を書くイメージで原案を考える必要はありません。おそらく、考えても、弁理士先生には使っていただけないでしょう。
弁理士の先生も、技術的な専門分野(機械とか化学とか)がありますが、人の発明をいきなり聞いてすぐに理解できる人は少ないです。逆に自分がそういった立場になれば、事情は自然とご理解いただけると思います。
そうすると、弁理士の先生から、色々質問が来ると思うので、それに対しては素直に答えていけば良いです。
請求項の構成について
権利範囲は広い方が良いのは当然として、特許事務所さんとの打ち合わせで、請求項の構成はどうしましょう。とか、請求項の構成はこんな感じで良いですか?と打ち合わせの時に聞かれることがあります。
弁理士の先生によっては、そのような質問はなく、明細書のDraftで確認してください。といったスタンスの先生もいらっしゃいます。
権利範囲は特許の肝になる部分ですから、請求項の構成は事前に考え、最低でもこれこれの範囲は権利化したい。出来れば、このレベルまでは権利化したい。といった、こちらの思いを伝えることは大切だと思っています。
明細書の確認について
原案が出来たところで、こちらが確認をすることになります。一番多いのがやはり技術的な点で、微調整が必要な場合が多いので原案は時間をかけてもチェックしましょう。
出願以降の特許事務所との付き合いについて
基本、社内の戦略、状況に関して、特許事務所は知る立場にないので、すべてこちらから話をもっていく必要があります。
例えば、優先権を主張して特許をまとめる場合や分割出願で共倒れを防ぐような場合でも、基本はこちらから持ち掛ける必要があります。
知財部があるような会社では知財部が動きますが、そういったメンバーがいない場合には折角出願しても、十分育てる事が出来ない可能性があります。
また、当たり前な話ですが、特許事務所が発明を考えてはくれません。基本特許や当たり前特許など強い特許の大切さを紹介して来ましたが、社内で検討を重ね、発明の形にして特許事務所に相談する必要があります。
弁理士の先生は当然プロですので、相談することで、他の例は考えられませんか?など、アドバイスはもらえますが、少なくとも私が経験した範囲ではこちらの発明案をどれだけ広げるか?といったレベルになってしまいます。
腕のいい弁理士の先生にお願いしたら、強力な特許にしてくれる。という事は基本ありません。発明そのものが強力である事が必須と考えた方が良いです。
一方、拒絶理由通知書やそれに対する意見書、補正の考えは、やはり、プロのコメントがいただけます。どこでどう見つけてきたのか、執念のような物を感じる事もあります。
ただし、先方からは案が出てくるだけです。これで行くか、別の事が考えられないか、技術的な記載の微調整が必要ないか、についてはこちらで考えて判断する必要があります。
他に、特許調査や、ライセンスや、契約関係など、商標や意匠も含めた知的産業に関して、色々相談に乗ってはもらえると思いますが、私は経験が無いので何ともコメントしがたい所があります。特許調査は調査会社にお願いしたことはありましたが、特許事務所さんにはお願いした経験はありません。
おそらくですが、特許事務所さんは、相談すれば、色々アドバイスいただけると思いますが、いずれの場合もおそらく、最終判断するのは依頼者、つまり、あなたです。
弁理士の先生が言っているので大丈夫だろうではなく、疑問点は素直に質問し、納得したうえで判断することが大切なのではないかと思います。
まとめ
- 特許事務所との出願打ち合わせは発明内容の説明がメイン
- 明細書はフォーマットが決まっているのでそのフォーマットに沿って説明するのが大切
- 特に先行例との技術の違いは何か、どのような効果が得られたのか?を特に説明する。
- 強力な発明にするには発明者が強力な特許に仕上げるしかない。
- 拒絶理由通知書の対応などプロのアドバイスはもらえるが決めるのは依頼者である。
- 疑問点が有れば素直に質問し、納得した上で決断することが大切。
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