特許以外で自社技術を守る方法、公知化と先使用権について分かりやすく解説します。

特許の本質、強い特許、攻めの特許、守りの特許

特許権はそもそも排他権なので、特許以外の方法でも自社の技術を守る事が大切です。公知化と先使用権とその要件、立証するための証拠資料と注意点を分かりやすく解説ます。

公知/公用化

公知/公用になると特許に出来ません。従って、誰でも実施できるようになります。もちろん公知化した人も使えます。

公知/公用とは?

(a)特許出願前に日本国内又は外国において公然知られた発明(第1号)
(例えば、テレビで放映、発表)

(b) 特許出願前に日本国内又は外国において公然実施をされた発明(第2号)
(例えば、店で販売、製造工程を不特定人が見学)

(c) 特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明(第3号)
(例えば、日本国内又は外国において公表された特許公報、研究論文、書籍、CD-ROMなどに掲載、インターネット上で公開)

誰でも知りえて、使える状態で、具体的には上記のように特許法では記載されています。

社外に情報が出る事=公知化ではありません、機密保持契約や共同開発契約などを結んでいれば、誰でも知りえるわけでも使える状態でもないので、あえて公知化しない限り公知とはなりません。

ただ、共同開発や機密保持はどちらの発明か揉める事が多いので、締結前に、自社で出願できるものは出願しておいた方が良いのですがそれは別の話です。

出願特許の実施例の充実

 すでに誰かが特許権を持っている内容を公知にしても当たり前ですが後願排除になりません。それどころか、あなたの特許を侵害しています。と公言しているようなものです。自社の実施事項が他社の特許に抵触していないか調査したとしても可能性をゼロには出来ません。

自分の所で本当に実施しているかどうかわからないように公知化する事が大切です。

特許の実施例には実際にやっていることを書かなければならないといった制約は有りません。実際に実施している事。していない事。を色々記載出来ます。よって出願特許の実施例を充実させることで公知化を図るのが望ましいです。

特許に記載しそびれたら、1年後の補正の時にしっかり追記する。あるいは、似たような特許出願を考えている時に追加するなどの対応が必要です。

実用新案を出願する

 似たような特許出願が無いが、特許化するのは難しそうなちょっとした改良を思いついた場合、後願排除を目的として実用新案で出願していました。通常、数カ月で公開になるので、新たに特許を出願するよりは公知化に有利です。

 実用新案も自分で実施しているもの以外出願してはいけない。等の縛りはないので、権利化するまでもないが実施するかもしれないような技術にも使えます。

公開技報といった制度もあるようですが使ったことはありません。費用もゼロではなく、手間もかかりますが、それ以上にメリットが全く感じられません。即日公開も可能なようですが、公知化の目的がバレバレで、デメリットの方が大きいと思います。

先使用権の充実

ノウハウの秘匿

権利化は公開されることが前提なので、特許出願はしたくない。また、公知化もしたくないような場合は秘匿するしかありません。

権利侵害を検証するのが容易なものは秘匿はお勧めしませんが、検証するのが難しいもの、具体的に言えば生産方法などで、特に社内で完結できるものなどは秘匿にしておいた方が良い場合が多いです。

秘匿するには機密管理で対応するのが一般的ですが、それだけに頼るのは難しい所があります。

メーカーで特許出願を推進すると、生産方法の特許が良く出て来ます。出願するか秘匿にするか?の議論は良くありますが、秘匿にした場合、どう守るか?といった議論が軽視されているように思います。(私の勤めている会社だけかもしれません)

先使用権の確保

先使用権とは?

ある特許出願がされた際に、その出願前に事情の準備を進めていた場合事業継続が可能になる制度です。

特許庁HP、先使用権 あなたの国内事業を守る。より

先使用権の要件:日本国内で自ら開発し事業の準備を実施している事が必要です。

先使用権の証拠となる資料

特許庁HP、先使用権 あなたの国内事業を守る。より

 資料の客観性が一番大切と言われています。社内の資料ではなく、第3者の資料の方が良いと言われています。

 事業を準備する段階になれば、社外の資料も残しやすいです。ただし、研究開発の段階では、社外の資料は基本的にありません。

 完全を目指すのであれば、公証役場にて公証制度を利用した証書を獲得しておく必要があると言われています。

 言うのは簡単ですが、実際に準備するのは色々な意味で大変です。立証するのに必要な情報が残っていなかったりもします。先使用権の確保を目指すのであれば、開発の段階からその方針を明確にし、エビデンスはしっかり残して行く必要があると感じています。

まとめ

  1. 公知公用化
    • 公知公用になれば、特許は取得できないが、実施は確実に出来るようになる。
    • ただし、誰かの特許権を侵害する場合があるので注意が必要
  2. 先使用権の確保
    • 先使用権の確保を目指すのであれば開発の段階からその方針を明確にし、エビデンスはしっかり残して行く事が大切

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