守りの特許とは?自社の技術を守る特許網の構築方法を分かりやすく解説します。

特許の本質、強い特許、攻めの特許、守りの特許

特許は攻めに強く、守りに弱い

上の図は、特許は攻めに強く、守りには弱い事を概念的に示したものです。

赤い自社技術を特許で守ろうとした場合に見える部分は特許で守ることが出来ても、の部分を攻められたら防げません。例えば、あるガラスを新たに開発したような場合、組成の特許だけで守れるものでもなく、製法や他の観点から、必要な特許を出して行く事が大切になります。

一方、青い他社技術を特許で攻めようとした場合、かりにの部分を攻撃できる特許が創出出来れば、その特許だけで、他社技術の実施を止めさせることが出来ます。

上の図は、そういった状況を考えると、自社の特許を守るには、特許網といった複数の特許で、あらゆる方向からやってくる敵の攻撃に備える必要がある事をイメージで示しています。

結局、自社の特許を守る場合、以下の3っつの方法が考えられます。

自社の技術を守る3っつの方法
  1. 複数の異なる観点から特許を出願し、特許網を構築する。
  2. 個々の特許の特許範囲を広くすることで、守備範囲を広げる。
  3. 個々の特許の改良特許を考えて、敵の攻撃の付け入る隙間を少なくする。

場合によっては、特許で守るだけでは不十分で後願排除を目的として公知化を検討したり、先使用権という特許とは別の対策を考える必要が守りの場合出て来ます。

権利範囲の広い特許の書き方は以下の記事を参照ください。

特許網を構築する。

周辺特許を考える

周辺特許とは?

技術の構成要素について、個別に特許が成立すると、その技術そのものが使用できない。別の技術の構成要素に関しても特許を検討する必要がある。

 周辺特許といった文言は一般的なようで、検索しても出て来ますが改良特許のような意味合いで使われることが多い様です。ここで言いたい事を上記のように定義しました。

液晶TVの場合

例えば、液晶TVの場合、液晶技術だけではTVは動かないですよね。

必要なパネル化技術、回路技術で、他社に特許を取られると、そもそも技術として成り立たなくなるという事です。

梱包容器の場合

特開2017-149471より抜粋

液晶TVは詳しくないので、右の図のように、ガラスの梱包容器で説明すると、一般に金属でできたL型のフレームにクッション材がついていて、ベルトがあって、当て板があって。といった単純な構造です。

しかし、例えばクッション材の特性に関して特許で押さえられた場合、容器そのものが使えなくなってします。

そういった意味で別の技術の構成要素についても注意が必要です。

クッション材は市販品を使っているから心配ないと思っていると足元をすくわれます。

数ある市販品から何故、そのクッション材を選んだのでしょう?梱包容器に必要なクッション材の特性とは何でしょう?

その辺りを考えると市販品でも「そういった特性をもったクッション材を備えた梱包容器」として特許化出来る場合があります。注意が必要です。

機能/技術課題を洗い出す。

例えば、梱包体のクッション材を例にとって考えてみましょう。クッション材にどのような機能が必要か、どういった技術が必要かという事を良く洗い出すことが大切です。

機能/技術課題を洗い出すことで、技術の多面性に対応し、新しい特許を創出して行く事が大切です。

出願特許そのものを守りに強くする。

守りに強い特許にするには?

特許権とは排他権ですから、青い部分はいつ攻撃されるかわかりません。従って、青い部分を権利範囲の小さな従属項で赤く更に塗りつぶし、カバーしてあげる。青い部分を極力少なくして、相手の付き入る隙間を極力少なくすることが、守りの特許を強くすることだと言えます。

♦選択発明に対して

後述する選択発明のように範囲ではなく点で射貫く特許も存在します。そこは、実際に特許を書く際に考えられる要素をたくさん書き出して新規性で守ることを考えましょう。詳しくは以下の記事を参照してください。

従属項を充実させる。

 私自身、当初は従属項単独で権利範囲を持つとの認識はありませんでした。独立項では範囲が広すぎるので審査に通らず、修正が必要になった場合、極力広い範囲でとりたいので従属項で小出しにして、特許範囲がどこまでかを探るため。といった程度でしかとらえていませんでした。

 従属項も権利範囲を示しています。従属項を増やすことで、付け入る隙(青色の部分)は少なくできます。数が多いとそれだけ特許申請にお金がかかる等ありますが、発明事項に漏れが無いかよく確認しましょう。

改良特許を考える。

先の記事で紹介したCFつき液晶カラーTVをイメージしていただけると良いです。改良特許はどこに改良点が有るかわかりません。従って、可能性は無限にあるとも言えます。

つまり、改良特許で従属項を充実させることで、他社の付け入る隙を少なくは出来ますが、ゼロには出来ない。という事は認識しておいた方が良いと思います。

 この場合は既存の特許の構成要素を満たしていないので、改良はしていますが、他社の付け入る隙を少なくはしていません。注意しましょう。

まとめ

自社技術を守る特許網を構築し、個々の特許も強化する
  1. 技術を多角的に捉え、別の角度からの出願(周辺特許)を考える。
  2. 機能/技術課題を洗い出し、見方、切り口を変えて新しい特許を創出する。
  3. 従属項を改良特許などで充実させる。
  4. 選択特許に対しての対策を考える。

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