権利範囲の広い特許を取るためには、権利範囲を示す請求項の書き方を考える必要が有ります。
ポイントは以下の5つです。
- 請求項の構成要素を少なくする
- 請求項の構成要素の一般化・上位概念化
- 発明の一般化、上位概念化
- 発明の適応範囲を決める。
- 請求項の構成、骨格(独立項、従属項)を考える
以下説明して行きます。
請求項の構成要素を少なくする
請求範囲は請求項に記載された言葉で示され、すべての構成要素を満たす範囲が特許範囲になります。
ですので構成要素が増えると権利範囲は狭く、構成要素が減ると権利範囲は広くなります。
右の図が、イメージ図です。
構成要素A,B,CからCを取り除くことで、その分、特許範囲が広がることになります。
実際には、独立項の特許範囲は極力広くとり、請求項で補足して行くことで審査を通して権利範囲を探っていくことになります。
構成要素を少なくするのは、必要不可欠な構成要素は何かを考える事になります。
このことは、後で述べる発明の一般化、上位概念化に通じるものが有ります。
請求項の構成要素の一般化・上位概念化
構成要素を表す言葉をより範囲の広いの言葉に変換することで権利範囲を広くできます。
ベン図で言えば、右の図のように構成要素A,B,C,の円そのものを大きくすることになります。
言葉を一般化すると、自分の技術の応用範囲が広がります。自分の技術の応用範囲、発明の適用範囲を想定する必要が出て来ます。
例えば、小麦粉の運搬方法で、粉状であるため、袋詰めする際に、飛散し、非常に効率が悪い(飛び散ったものは使えません)なので、袋つめする際に、飛び散らないようにある工夫をしたとしましょう。
しかし、その工夫は小麦だけでなく、他の例えば砂鉄や石灰の粉にも適応できるのであれば、粉体と定義することで、カバーされる範囲が広がります。
しかし、発明の範囲を広げると、その分、発明の内容も一般化しないといけません。小麦粉や石炭の粉、砂鉄などにも応用できるような内容にしないといけません。
その際に大切になるのが、発明の一般化、上位概念化です。
発明の一般化、上位概念化
つまり、例えば、他は?So What So Why
その際に大切になるのが上記の考え。つまり、例えば、他は?で概念の上下動を行う。ロジカルシンキングの本で多く紹介されているSo What、So WhyのSo What、結局 何?ですね。
今まで、小麦で考えたけれど、粉体と考えた場合、砂鉄や石炭の粉、火薬など他の粉体の運搬に応用できないか?他に応用しようとすると、更に考えなければならない工夫は無いか?それはつまりどういう事。他にない?それって他の粉体(例えば金属粉等)に使えない?といった事を考えるという事です。
「対比・類似・因果」
事例を対比させ、類似点を探す。その類似点を別の言葉で言えば何と言えるか(結局なに?)といった事が最初。それは、結局何が原因だったんだろう。そのことで、どういった結果になるんだろうというのが因果、そういった思考を繰り返すことが大切になります。という事です。つまり、例えば、他は?と同じことを言っていると思っていただければいいかと思います。考えやすい方をお使いください。
弁証法「正・反・合」
「正・反・合」はいわゆる弁証法、対立する考え(反)を統合し、より先に進もう?(高次)という考えです。仕事そのものが当てはまるとも言えそうです。
例えば、砂鉄に対しては有効な方法であったが、小麦に関しては、食物なので、人体の影響が懸念されることから、その技術は使えない。その矛盾を解決する為、人体の影響がない方法を考えようといった事です。
そうすることで、小麦に対しても新たな発明の可能性が出て来ます。
参考図書:失敗学 実践編 濱口哲也 平山貴之 日科技連
発明の適応範囲を決める
文言上、先願が上位概念で記載された場合は下位概念で選択すれば、新規性はあります。
ただし、先願に下位概念(ゴム)が記載されていたり、先願出願時の技術常識から見て記載されているに等しいと思われる時は新規性なしとなります。
発明の範囲は広い方が望ましいですが、範囲を広げると、その分、新規性/進歩性の確保も難しくなります。
独立項では範囲を広げても従属項で必要な発明の範囲に狭めて行く事が大切になります。
請求項の構成、骨格(独立項、従属項)を考える
最初の独立項は、発明の必要最低限の構成要素(骨格)を記載すると考えましょう。例えば、「AとBとCとからなる○○××装置」といった具合です。
従属項で、各要素、A、B、Cを説明して行く、といった流れになります。
まとめ
- 請求項の構成要素を少なくすることが、特許の権利範囲を広げることに繋がる。
- 必要不可欠な構成要素は何か?を考える
- 言葉を一般的な物(上位概念化)にする。
- 発明そのものを一般化、上位概念化する。
- つまり、例えば、他は?で概念の上下動を行う。
- 「対比・類似・因果」、「正・反・合」が大切。
- 適切な発明の適用範囲を決める。
- 広すぎると新規性/進歩性の確保が困難。
- 請求項の構成、骨格(独立項、従属項)を考える
- 独立項では広く、従属項で狭くが常套手段
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