私はこのブログで人の行動による品質の不具合には以下の3種類のミスがあると紹介しました。
- 知識・技能の不足によるミス
- 自己判断によるミス
- 正しいと思って実施したミス
しかし、当然、3種類ですべてカバーできるかと言えばそんな単純ではありません。うっかりしていたとしか言えないようなうっかりミスというのは確かにあります。
ヒューマンエラー 第3版、小松原 昭哲 著、丸善出版の力を借りて本ブログでまだ紹介していない対策をもう少し広く考えてみたいと思います。
複数の対策が必要「スイスチーズモデル」
例えば、3、正しいと思って実施したミスで紹介した失敗例の対策として、「本体にラベルを付けろ」を紹介しました。
しかし、本体に貼るラベルの表記を間違えたら?思い込みで、ラベルを確認したつもりで、後から見たら自分が見間違いをしていた。など、失敗する原因は他にも色々考えられそうです。
「スイスチーズモデル」と呼ばれていますが、色々な対策をうって、少しでもチーズの穴を通過して失敗につながらないように総合対策を進めることが必要という事になります。
分かりやすくする。やりやすくする。
見間違い、聞き間違い、身体能力(加齢、老眼)、記憶力、錯覚など、色々考えられます。
基本対策は5S、「○○しにくい。」と思うところは改善して行く
やりにくい作業を簡素化する。そもそもミスを誘発する作業(例えば転記や入力作業等)はやめられないか検討する。のは大切ですが、そうはいかない場合は少しでも分かりやすく、やりやすくする必要があります。
特に、聞き間違いは言い間違いもあります。記憶力も頼りになりません。「記憶ではなく記録で確認する」事が大切です。
また、実際に現場で作業している(事務作業も含みます)方に考えてもらう方が良く、まさしくQC活動(小集団活動)にはこのようなテーマがふさわしいと個人的は思っています。
取り違い、思い込み対策
取り違い対策
- 似ているものを近くに置かない。(間違える可能性をなくす)
- 識別部分を目立つようにし、指差し確認を行う。
思い込み対策
- 一貫性、明瞭性を高める。
- 標準化、共通化、を計り、例外や無用な変更を避ける。
- 人間はいつもと違うときに、いつもと同じ行動をとる。
- 合致性を高める。(普通の感覚に合わせる)
- 例えば右の図のように、レバーを上げるとクレーンが下がる。下げると上がるようなシステムは誤動作の要因になるという事です。
- ワーストケースから考える癖をつける
- 例えば、検査機が異常値を示した場合、検査機を疑う前に現物を疑う。
- 一歩引く、視点の転換、ひょっとして?
失念対策
- 事前の段取り確認、リスト化、チェックシート、
- 忘れたら先に進めない、あるいは気が付く仕組み作り。
- 作業終了時に確認する仕組み作り。
- 未来の事はメモ(手帳、管理ソフト)し定期的に確認、
- 自動処理は慎重に。
- 想定外に対応できない。最低限マニュアルモードは設置したい。
- ブラックボックス化しやすく、不備に気が付かず大量に不良品を作る。対策としては設定のダブルチェック、リスクアセスメント、実運用前の確認項目の作成、運用後の確認
組織、チームでの現場力
労務管理/労働環境を見直す
- 体調、気分、意欲、心配事等、顔色、応答をよく観察し、必要に応じて仕事の見直しも検討
- 眠気、疲労対策、適度な休憩、軽い運動、昼休みはスマホを見ずに目を閉じる。(頭を休める)
- 労働環境、熱い、寒い、臭い、うるさいの改善。
- 話しかけ、電話、外来者等、意識集中をそぐものの排除。集中タイムの設定(電話、話しかけ禁止)等
危険予知(KY)能力の向上
- 正しい状態をよく理解し、起こり得る不具合を幅広く学習させる。
- 対応する際のスキル、技術を学習させる。
チームワークの改善
ミスを誘発するチーム状況
互いの不信感、過度な競争、信頼、遠慮、無関心によるエラー、本来共有すべき情報を共有していない。誤りに気が付いても発信しない。など、フォロー体制が取れていない。
原因は?
色々でしょう。役割分担が明確でない。あるいは仕事が人についていて属人化していて他の人には良く分からない。といった事もあるかもしれません。
言われた事だけしていればよいとか、相手が上司だと、物が言えなかったり、自分の判断が間違っていると思ってしまう場合もあるでしょう。
挨拶も出来ておらず、雰囲気そのものが悪い場合は人間関係のわだかまりがあるかもしれません。その場合は担当変えを考えた方が良い場合もあるでしょう。
対策は?
CRMスキル(Crew Resource Management)
飛行機運用で提案されているスキルのようです。参考になると思うので紹介します。
- 互いに疑問なことは声に出す。
- 不明瞭な言い方はしない。
- 相手からの発言にはかならず反応する(反応しないと伝わったのか伝わっていないのか,相手にわからない)
- 気づいたこと,操作を始める前には必ず発言し情報と状況を共有する(例:”右前方に積乱雲がありますね”や”今から積乱雲の回避操作を始めます”)
チーム作り、リーダーの役割
1,コミュニケーション
いずれにしてもチームリーダーが良く観察し対策して行くしかありません。コミュニケーションで気を付けることも記事にしています。
時には厳しく接する必要が出てきても、相手の存在、価値観を認めた上で、具体的な行動がどういった問題につながっていると私は考えているのかを話す。それでも問題行動が続くなら、警告や、しかるべき処置も致し方ないと思います。
2、認める、感謝する
褒めるだけでなく、認める、感謝しあう事も大切で、まず、リーダーが実践して行くことが大切になります。
3,ソルーションフォーカス
心理学では、肯定的な未来(目標)を定め、それに向かって何が出来るか、を議論し、小さなことでも出来ることからようというソルーションフォーカスといった考えがあります。
元々は心理カウンセルの手法ですがビジネスにも使えると思っています。
「15分ミーティング」のすごい効果、矢本 治 著、日本実業出版社を紹介します。筆者の方が認識されているかどうか分かりませんが、ソリューション・フォーカスをビジネスに活用した実践版のような本だと思っています。
トップの意識
トップの意識が会社の雰囲気、風土に影響する。トップはそこをよく認識すべきという事です。
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