部下のやる気を引き出して、チームを活性化させたい。と悩まれている上司の方、具体的にどうやって行けばよいのか、コーチングや心理学の理論をベースにしたやり方を提案します。
ジョブ・クラフティングとは、 従業員一人ひとりが仕事の捉え方や業務上の行動を修正することで、現在のやらされ感のある仕事を働きがいのあるものに変容させることです。
社員の「働きがい」を生みだす『ジョブ・クラフティング』を首都大学東京 高尾教授に聞く! | エン・ジャパン(en Japan) (en-japan.com)より
やる気がないとはどういった状態か?
やる気がないと言われているのは、すべての人が持っている社会的な欲求やそれよりも高次の欲求を満足する「具体的な方法が見つけられないだけ」と考えられます。
スタンフォードの心理学講座 人生がうまく行くシンプルなルール、ケリー・マクゴニカル、日経BP社
マズローの要求の5段階説によると、人は誰でも所属欲求や能力や自主性を認めて欲しいといった欲求を持っています。
ただ、それは個人の欲求なので、その欲求が職場に阻害されていると感じればやる気は下がり、繋がっている。満たされると思えばやる気は上がることになります。
人間関係が悪ければやる気をそがれるのは当然ですが、人間関係が良好でも、自分の価値観、進みたい事、やりたい事が今の会社にはない。つながりはないと感じた場合、やる気を失って会社を去る人は結構います。
一方、自主性や自分の能力にこだわらない方も多くいますが、ここに私の居場所があると思えないと、やる気を失うのは容易に想像できます。会社を去る人も出てくるでしょう。
したがって、部下のそれらの欲求を引き出し、理解し、受け止める事が前提として必要になります。
ジョブ・クラフティングに必要な事
部下の働き甲斐(自分も含む)や「やる気」を引き出すには、システムがうまく機能している事が必要です。不透明であったり、不公平感が有るとやはり、働き甲斐ややる気は阻害されます。
しかし、システムは全員が納得するシステムはおそらく無理でしょう。システムを機能させるためにはマネージメントを、マネージメントを機能させるためには日々のコミュニケーションを、日々のコミュニケーションを機能させるためには信頼関係の構築が必要であることを上記の図は表しています。
何が大切かと言われればすべて大切だと思うのですが、信頼関係が土台になっているのは間違いないでしょう。
それでは信頼関係を構築するにはどうすれば良いのでしょう?心理学では、相手の思いを受け止め、共感して聞く、傾聴が大切と言われています。
部下の「やる気」や「働き甲斐」を引き出すには、傾聴を通して、部下の思いを受け止める事が信頼性構築のために非常に大切になります。
部下の思いを受け止める
部下の思いを受け止める
- 部下が仕事や人生で大切にしている事、価値観を分かっていますか?
- 部下の貢献によって支えられている「目的」「ビジョン」を伝えていますか?
- 部下が自分で伸ばしたいというキャリアを分かっていますか?
- 部下の職場での人間関係等の悩みを分かっていますか?
伸ばしたいキャリア、やりたい事。と言われても単純に現実から逃れられるためだったり、友達を見てて影響されて自分もやってみたかった事だったり、本当にやりたいのに才能が無いとあきらめているだけだったりします。また、実際の仕事でやらなければならない事だったりもします。
そのため、傾聴の他に自問自答を通して部下に深堀してもらう事が大切です。
深堀することで、やりたい事の守備範囲は広がります。一方、会社の方は会社のビジョンを個人個人の役割まで細分化するとやはり守備範囲は広がります。
個人の欲求と会社との共有部分を見つけて、出来るだけ広げる事が、大切になります。
この考えを図式化したのが下の図です。
仕事は与えられるもの?やりたいことは求めなくて良い?
仕事は与えられるもの。まずは、本人はこれをしたい。というよりも、まず、与えられた仕事を一生懸命やって、実力が認められたら自然とやりがいもついてくる。
と考えられている方もいるでしょう。
私もその一面は有ると思っています。人は自分でコントロールできない物に対してはやる気が出ない事が知られており、実力が認められ、自分の意見も採用されてくるようになるとやりがいを感じる面は確かにあると思います。
しかし、それで幸せな人生を歩める人は、本来の自分の持っている価値観と自分が一生懸命やって来たことが、結局、どこかで重なって自分の中で折り合いを上手くつけて来たんだと思います。
有名な精神分析家のユングは人間はTPOに応じて仮面をつけている。その際に、本当の自分(本来の自分)を覆い隠している。その覆い隠された部分をカゲ(影、陰)と呼びました。
別の言い方をすると、自分の中にも色々な側面が有り、仮面をつける事はもう一人の自分を捨てているとも言えます。
本来の自分はもしかしたら捨ててきた自分かもしれません。陰に気がつき、本来の自分を捨ててきたと思うとやりがいを見失い、深く悩むことになります。
価値観や本当にやりたいことは、年齢によっても違ってきます。時々、自分の価値観ややりたい事と、今の仕事の関係を見直してみる事はやはり大切だと思います。
思いを深堀する切り口
未来から今の自分を見つめる。
肯定的な未来を想像します。その際、出来るだけ、何が見える、何が聞こえる。何を感じる。を感じて「嬉しくなる」「楽しくなる」「夢中になる」「興奮する」「ワクワクする」か?ということが大切になります。
本当はどうしたい。それをやって楽しい?それを達成した後は何したい?など考えていると、だんだんやりたい事がだんだん頭の中に浮かんでくるようになります。
過去を振り返ったのと同様、未来に対しても、成りたくない未来はどういった状況か?と考える事も有効です。それだけ、やりたいことが絞り込めます。
未来の自分から今の自分に手紙を書くといいと言われています。より現実的に考えられます。未来と言われても、10年後、20年後と言われるとイメージしにくいでしょうから、3年後、あるいは5年後などと設定すると考えやすいと思います。
手紙の内容は、今の自分に感謝している事。今の自分があの時、ああやってくれたおかげで今の自分がいる。あるいは、あの時、あれをやったことを後悔している。あるいはしなかったことを後悔している。です。
ミラクル・クエッション
もし、魔法が使えたらあなたは、何をしたいですか?と考えてみましょう。妄想ではなく、出来るだけ現実的に、臨場感を持って考える事が大切です。
- やりたいことが達成できたと、どうして知ることになるか?
- やりたいことが達成できると、あなたの何が変わるのか?
- やりたいことが達成できると、周りはどう変わりますか?
ソリューション・フォーカストと呼ばれる心理療法の応用です。
過去の自分から今の自分を見る。
参考:コーチングの基本 鈴木義幸監修、日本実業出版 P124から抜粋、追記
楽しかったのを振り返るのは分かりやすいですが、嫌だったこと、嫌いな事、後悔している事も振り返ることでやりたい事が絞りやすくなります。
振り返る際に、自分はどうしてこれが好きなのか、嫌いなのか?を考えると考えると、自分の好き嫌いの共通している考え(価値観といった表現が一番近いような気がします。)が分かってきます。
自問自答
これがやりたい事、と思ったら以下の質問を自分にして自問自答しましょう。
- 健康や幸福感、仕事への満足感を高めたいといった、長い目で見て「生活の質を向上させるもの」ですか?
- 「表面的ではなく、心の底からなりたいと思える人物像」を反映していますか?
- 「やりがいのあるもの」「楽しいと思えるもの」ですか?
- それを達成した後には何がしたいですか?
- 「最高の自分を引き出す方法、ケリーマクゴ二カル、大和書房」 (参考図書)
- 「人生がうまくいくシンプルなルール、ケリーマクゴニカル。日経BP社」(参考図書)
- 「NLPの基本がわかる本、山崎啓支 日本能率協会マネジメントセンター」(参考図書)
部下の悩みを受け止める
事実を聴き出す。
- まずは部下の話をしっかり傾聴し、信頼関係を構築する。
- 事実(瞬間/瞬間)を聞き出す
- その時、何を考え、何を感じたかを聞き出す。
相手の言葉にはフィルターがかかっているので、言っている事が真実とは限りません。客観的な事実を聞き出す質問は大切になります。具体的に教えて? ○○さんは何といったんですか? いつ頃からそう思い始めたのか? きっかけは何なのか?もっとストレートに 何があったんですか?
客観的事実を話すことで、部下がそもそも自分が思い込みをしていたことに気が付くこともあります。
参考図書:コーチングよりも大切なカウンセリングの技術 小倉 広著 日本経済新聞社
相手の考えを客観視する質問をする。
- 親友が全く同じ悩みを抱えていたら、なんて声をかける?
- そう思う根拠は?事実に即してる?
- そう考えて誰が得する?メリット、デメリットは?
心理カウンセルの手法は色々あるでしょうが、思考、認識を客観的に見えるようにして、相手に気が付かせる手法が殆どです。
実際のカウンセリングでは、行動や思考を記録してもらって見える化するようなこともします。
一方、自分の内面に働きかけるフォーカシングや内観療法と呼ばれる方法もありますが、こちらは、手軽に使えるようなものではありません。
自分を客観視する質問は誰でも出来ますので皆さんにお勧めしたいと思います。
具体的な解決策を求められたら?
解決策はあなたの中にしかありません。一緒に考えて行きましょう。というのがカウンセリングの模範解答のように言われていますが、実際の部下、上司の立場であればそうはいきません。
提案はしても決断は相手に任せる。です。提案は複数考えておく事も大切です。
提案だけでなく、場合によっては喧嘩の仲裁に当たらなければならない場合もあります。
そんな場合もやはり、傾聴が基本です。当事者に思いを二人、別々に語ってもらいまずは落ち着いてもらいましょう。
喧嘩の原因が個人的な感情のもつれであれば、正直、深入りするのは賢明ではなく、距離を置くような処置を考えるのが良いと思います。
仕事の進め方の問題であれば、関係者などからも情報を入手し、事実の把握に努め、自分が把握した事実を二人に伝え傾聴を行うのがいいでしょう。
その時点で丸く収まりそうであれば良いですが、そうはいかない場合はやはり、解決策を複数考え、提示し、今後どうして行くか、未来に向けて協議しましょう。解決策は、関係者に相談しても良いです。
協議は二人を同席させたうえで話すのが良いか、個別に話すのが良いか、他のメンバーも入れて話すのが良いのか、等はケースバイケースという気がします。
まとめ
- 個人、個人が本当にやりたいことを傾聴や自問自答を通して引っ張り出す。
- 未来と過去から今の自分を見ることにより、本当にやりたい事を明確にする。
- 悩みは現実を一瞬、一瞬丁寧に聞き出し、何を考え、何を感じたか傾聴して行く
- 必要に応じて、客観視できるような質問をして、気づきを与える。
- 深堀した個人の欲求と会社のビジョンを具現化した個々の役割との共有ゾーンを広げ自分のやりたいことが会社で活かせないか?を考えて行く事が大切。
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