すでに納入した物、これから作るものの流出防止策を決めるまでのスピード感、納得できる確実な再発防止対策が大切になると感じています。
クレーム?苦情?改善要請?
クレーム対応と言えば、お客様の不満、要望、含めてすべてをクレームと呼んでいるように思います。
お客様が困っている、不満に思っている状態なので、速やかに誠意を持って対応するのが大切なのですが会社としてどう対応するかは決める必要が有ります。
いずれにしても、設計/開発部門が判断すべきことではなく、営業が判断し、お客様と交渉する問題です。
新商品を開発する際、お客様と仲良くなると、直接、開発/設計者にクレームが来ることが有りますが窓口は営業に一本化しましょう。
品質保証のメンバーが全面的にお客様と交渉して行くようなケースもありますが、上記対応が出来る事が必要になると思います。
過失が有る場合
仕様書、契約内容を満たしていない。あるいは、本来、必要な機能が得られず、その原因が供給側の製造工程にあった場合は議論の余地なく回収/代納する必要があるでしょう。
分かりやすく言えば、サプライヤーに落ち度(やってしまった!)がある場合です。
ガラスの梱包容器で溶接の作業にミスが有り、必要な強度が得られないことが判明したような場合です。
場合によっては損害賠償の請求が有るかもしれません。私は営業をしていた時に損害賠償を要請された経験は有りますが、受けた事はありません。
現物の損害であれば代納で済むはずです。
機会損失や不良品の処理にかかった実費などでしょうが、因果関係や金額をサプライヤーが納得できる形で進めるのは、請求する側から見ればハードルは高いと思います。
過失が無い場合
私は落ち度なく製品を作りました。と主張しても実際に製品として使えない場合、その原因がやはり製造工程に有るのであれば回収/代納はやはり必要でしょう。使えないんですから
実際にその欠陥が、製造工程で発生したのか?お客様の工程で付けたのではないか?といった切り分けが大切になります。お客様の工程の問題であれば当然クレームになりません。
紛糾しやすいのは お客様も認識できなかったし、製造側も作る時に認識していなかった事が問題になるような場合です。
ありがちなのが、日本では問題なかったものが、海外で使用するようになると使えない問題が出てきた場合です。
海外で、特殊な使い方をされていたりしていて、その使い方はやめてください。変えてください。と話をして聞き入れてもらえる場合は良いですが、実際、変えるのは難しい場合もあります。それでも使えない物は使えない。と言われれば終わりの所が有ります。
しかし、過失が無い場合は責任は0/100ではありません。お客様の方で勝手に使用条件を厳しくしたり、お客様の装置の性能が当初より落ちているので使えなくなっているだけのケースも考えられます。
なので、工程内の調査でも当方に過失がない場合は、使い方で問題はなかったか確認する事が大切になります。
しかし、正論を押し通せば上手く行くというものでもありません。お客様でも責任を感じてもらえれば、先方でもいろいろ工夫して流動してくれるなど、協力してくれる事もあります。
クレームを受けた側は、そうやって何とか工夫してお客様に使ってもらえるように交渉するのが大事になります。
しかし、どう交渉するのかは営業マタです。一番大切な事は、営業にしっかりと背景を説明し、営業に適切な対応を取ってもらう事が大切という事になります。
品質クレームの初動
クレームを出す側
窓口はクレームを受ける側だけでなく、出す側も一本化しましょう。また、情報は事実のみ、的確に出しましょう。
特に初期は、良かれと思い、付帯情報を色々出したり、担当部署から直接連絡させたりすると、不確かな情報も混じったり、上手く伝わらなかったりというようなことが起こり情報が錯綜し混乱することが多いからです。
サプライヤー側で知りたいことは質問としてくるので、そこで的確にこたえるのが良いと思います。
現物/現場確認は機密保持の点で出し渋る方も多いですが、クレームを出す以上、基本現物を送るべきです。話だけでは相手は原因調査には不十分で当然現物を確認したいとなります。
今は便利になりましたので、海外でも動画で現象を共有することが出来ます。スピード勝負でまずは事実を伝えましょう。
クレームを受ける側
クレームを受けた側はまず実施しなければならないのは、ロット情報から同じ品質問題が発生する可能性があるロットを特定し、在庫品とお客様に納入した分の処置をどうするか早急に決めることです。
そのためには、お客様の影響度も考慮する必要が有ります。
ここまでは、最速で実施する必要が有ります。場合によってはその日のうちにお客様を訪問して、まずは回収する場合も出てくるでしょう。
暫定対策(応急処置)
すぐに出来る流出防止対策
既に作ってしまった物の処置を決めたら、今後、作るものをどうするか決めなければなりません。現物を確認してすぐに暫定対策を決めましょう。
暫定対策は応急処置ですので、すぐに出来きて確実に流出防止できる事が大切です。けがをして血を流している時はまず血を止めるのに包袋等で処理を真っ先に実施します。
それと同じで、生産性が一時的に落ちたり、検査を厳しめに実施しなければならなかったりしますが、まずは、流出防止を実施し確実に品質を確保させることが大切になります。
また、暫定対策は本来、恒久対策が出来れば見直すべきですが、一旦、お客様に提案すると見直すのが難しくなります。
お客様に報告すべき暫定対策と、社内でクローズできる暫定対策と分けて考える事も大切になります。
初動から暫定対策までは、被害拡大を防ぐためにもスピード第一で事に当たりましょう。
原因調査から再発防止まで
ここから先は通常の品質改善、不具合調査と同じ流れです。原因調査、対策立案/実施、効果の確認、再発防止です。対策も恒久対策は費用対効果をよく考えて決めましょう。
クレーム対応の基本
心しておかなければいけないのは、当たり前ですが相手が外部のお客様という事。対応の良し悪しは必ず競合他社と直接比較されるという点です。
クレームの処理によってはお客様の信頼を得て、拡販につながる場合もありますが、逆に納入停止になる場合もあります。
個人的には、初動のスピードと納得できる確実な再発防止が特に比較評価されると感じています。
対応できない場合は事実を説明し代案を提案する。
営業が強い会社はすぐに打ち合わせがセットされるも中身が何もなかったり、現物確認、該当ロット/グレーロットを特定もせず、質問ばかりしてくる。自社の都合だけを言ってくる。そんなサプライヤーさんはやはり付き合いたいと思いません。
クレームを出してしまった側も、実際には物理的に対応できる事、出来ない事は有るでしょう。しかし、相手は困っているのです。社内事情は有るでしょうが、それはクレームを出す側からすれば関係ありません。
事情を説明したうえで、その事情をどうやって解決して行こうとしているのか?今できる代案は何なのか?を提案することが絶対に必要です。
確実な再発防止
対策が結局、教育を徹底します。と報告してくるサプライヤーさんがごく稀ですがいます。
教育を徹底することでどうして再発防止が出来るのか?と聞いたところ、「私が直接厳しく教育したから大丈夫です。」と答えた人がいてびっくりした事もあります。
ダブルチェックします。も信用しません。ダブルチェックもしないよりはした方が良いでしょうが、チェックの仕方の方が大切です。指差し呼称が望ましいですが、徹底するのは簡単ではないでしょう。
ダブルチェックするのなら、二人で同時に確認しながらチェックするようにして欲しいと思います。一人がチェックした後にもう一人がチェックするのは時間の無駄だと私は思っています。
教育も大切ですが、人は必ずミスをします。そもそも、仕組みを変えない限り信用できません。確実な再発防止に関しては記事にしていますので良ければ確認ください。
まとめ
- 供給側の過失の有り無しにかかわらず、製品として必要な機能を果たせない原因が製品の製造工程にあったのであれば回収代納は免れない。
- 過失がない場合には使われ方の問題である可能性もあるので、どのような使われ方をしたのか確認する事が大切
- クレームの対応方針を決めるのは営業マター。回収/代納が必要なのかどうかすぐに判断することが大切。
- 初動ではスピード第一。現物/現場確認、発生ロット/発見経緯、クレームの影響度、回収/代納の対応を速やかに決める事が大切
- 暫定対策では確実な流出防止を最優先。
- 原因追及~再発防止までは通常の品質改善と同じ。ただし、クレーム対応は、競合他社と対応の良し悪しは直接比較される。初動のスピードと納得できる確実な再発防止が評価されやすい。
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