物理/化学的な不良の原因追及、原因調査。仮説の立て方、コツ

物理化学的な原因の仮説検証方法

私は不良の原因を追究する方法は、殺人事件を解決するTVドラマで良く出てくるやり方よく似ていると思っています。

  1. 現行犯逮捕(不良が発生している状況が観察できないか)まず考える
  2. 出来なければ現場検証、証拠、人間関係から犯人を推測する。(仮説立案)
仮説を立てる思考回路

帰納的な考えと演繹的な考えを行ったり来たりしながら深く考え、統合できる仮説を立てる。

最後まで読んでもらえると嬉しいです。

仮説を立てる方法、思考回路

帰納的仮説

 現実/データから原因を推定する。相関が見られるのであれば、なぜ相関が見られるのか?

 仮に機械Aと機械Bで明確な違いがあるのなら、機械Aと機械Bの違いは何なのか?書き出した特性要因図(魚の骨)を見ながらその違いがある事で、どういった要因ににより、発生率に明確な差が出るのか?を考え原因を追究する。

 実際に、物をよく観察することも大切。不良が発生している時としない時の違いを観察する。24時間は立ち会えないので、ビデオなどで24時間観察することも大切です。

 ただし、それで原因が分かったとして、それが起こった要因などは深堀する必要があります。

演繹法的仮説

  • 専門知識から考えられる直接の原因を絞り出す。
  • 要因に関しては、専門知識から要因を絞り出す。
  • 現実/データーと整合性が取れるか確認する。

仮説立案

帰納的な考えと演繹的な考えを行ったり来たりしながら深く考え、統合できる仮説を立てる。

 私は、殺人事件の解決方法と非常に似ていると思っています。別に推理小説の特別なファンと言う訳ではありませんがそう思っています。似てませんか?

推理するのではなく、現行犯逮捕が一番確実です。

不良が発生する現場を何とか見えないか?24時間ビデオ観察したり、スルーモーションで観察したり、まずは犯行現場(不良が発生する瞬間)をとらえられないかと考えるのが最初です。

しかし、瞬間をとらえるのは難しい事が多く、仮説を立てて行く事になります。

殺人事件と物理化学的な不具合の原因追及の共通のフレームワーク
  • 殺人事件の現場(現場の確認)、遺体解剖(現物確認)から犯人や凶器(原因)につながりそうな色々な情報を集める。
  • 分からなくなったら現場に戻る。(OK品とNG品の違い)
  • 被害者(不具合)の人間関係(要因)から動機(誘発要因/物理化学法則)も考慮しながら犯人(原因)を突き止めて行く
  • 物的証拠(再現試験/強調試験)が得られれば逮捕(解決)となる。
  • 鑑識(現物分析)を使うのも同じですよね。

仮説を立てるコツ

関係者でのブレスト

 一人で考えることで仮説にたどり着ければよいですが、実際にはその後のアクションにつなげるためにも、関係者でブレストするのが良いです。

 ブレストと言っても、帰納法的な考え、演繹法的な考え双方で考える事には変わりありません。

 その場合、大切なのは、人の仮説に賛成の立場で原因を一緒に探る事。直感/思い付きも大歓迎とすることです。

 直感/思い付きの中に正解がある場合もあります。上手く説明できないけど、○○が原因だと思う。との発言があれば、みんなで、どうしてそう思うのか?どうしたらそれが原因と考えられるかを一回考えましょう。

 あまりにピント外れであれば、通常発言者が発言を撤回します。

やっぱりこれは無理がある等の議論は仮説を絞る時に実施すれば済む話です。

良品と不良品の違いを現場で観察する。

良品が出来ている時と不良品が出来ている時とデーターではなく、現場をよく確認する事が大切です。その為には、不良内容から現場(発生工程)が特定できている事が必要です。

観察すると言っても、たまたま現場にいた時に不良品が発生する訳ではありません。24時間観察できるようにして、後で、不良品が発生した時の状況が確認できるようにロットトレースがしっかりとれるようにしておく事も大切になります。

直接の原因は何なのかをまずは考える

また犯人(凶器)となる直接の原因を先に考えるべきと思っています。つまり、演繹的な考えを優先するということです。

 帰納法的な考えを優先すると以下のような問題があると思っています。

  • 現実/データは不具合が起きた直後はまだまだデーター量が少なく、全面的に信頼するにはリスクを伴います。
  • 測定していないデータは当然、土俵に上がりません。

 直接の原因は何なのかを先に考え、要因を整理し、事実と照合していく方が良いと感じています。

 様々な要因の関係を色々考えて提案される方もいらっしゃいますが、そういった場合、要因同士の関係も2重3重になっていて、”風が吹けば桶屋が儲かる”式にしか第3者には思えないような場合が多く、直接の原因は何?となると、それは色々考えられる。等と言われる方もいらっしゃいます。

 確かに、直接の原因も一つとは限りません。何年にも渡って、慢性的に発生している品質問題のように、確実性の高いデータが十分ある場合は帰納法的な考えを優先させた方がまとまりやすい。のかもしれません。

 私が経験した中ではということで、ご理解いただきたいです。

加工技術の場合

 加工技術の難しさは経験しないと分かりません。それこそ、大昔から実施している技術で非常に単純な技術に見えるのに、実際やってみると、なんでこんなことが起こるんだろうと思うことが良くあります。

 パラメータも多く、最近は色々調べられるようになりましたが、まだ、定量的に現象を理解するのが難しいと思っています。

 教科書に載っているような加工理論は殆ど役に立たちません。加工品、加工条件、加工目的が変われば独自の問題が発生します。

仮説を立てて、検証実験、観察を繰り返して行くしかないといえばそれまでですが、以下の3点で考えると概ねカバーしているように思います。

  • 加工の均一性(加工部材の不均一、クーラント/研磨スラリーかかり方の不均一、加工圧力の不均一、周速差、等、加工時の温度の不均一)
  • 異物混入(クーラント/研磨スラリーへの異物混入)
  • 使用工具、副資材、装置の経時変化、劣化、寿命の見極め

付着物/汚れの場合

 分析で何か分かれば良いですが、わからないと厄介なのが付着物/汚れです。

工程の切り分けを行ったうえで、発生確率の高い、接触部材、落下物、飛来物、雰囲気の順に、考えられるものをリストアップして考えるといいでしょう。その後は消去法もありです。

 また、材料との親和性(くっつきやすい)も考慮に入れると良いです。分かりやすく言えば粘着系のものは、くっつきやすい。ガラスなら、○○が特にくっつきやすいなど。

 飛来物はどこか別の所で使っていたスプレー糊が空気中を漂って飛んでくるとか、雰囲気なら、輸送中の結露、特に夏場は結露が発生するとなかなか想像しにくいので要注意です。

仮説を複数立てる。

 仮説ですので、一つに絞る必要はありません。そうは言っても、現実に対応できる限度がありますので絞る必要があります。

 この段階で、この仮説は、さすがに無理があるなど、否定的な意見も出して可能性の高そうなものを探りましょう。

 自然とまとまればよいですが、まとまらないようなら参加者に例えばベスト3を考えてもらって、投票してもらう。第1位は5点、第2位は3点、第3位は1点として、総合点数で決めるといった方法がお勧めです。

 単純に挙手で決めるよりも、重み付けが加わりますので、個人の思いが反映されやすいです。

まとめ

  1. 帰納的な考えと演繹的な考えを行ったり来たりしながら深く考え、統合できる仮説を立てる。
  2. 良品と不良品の違いを現場で良く観察する。
  3. 直接の原因は何なのか?(犯人は誰?)をまずは考える。
  4. 関係者でブレストを行う。
  5. 仮説は複数立てる。

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