「あるがまま」を大切にして出来る事をやる「森田療法」とは?

心理カウンセリング

森田正馬によって1920年頃に確立された「森田療法」は現在の認知行動療法やマインドフルネスにも通じるところがあり、100年近く経過した現在でも非常に有効な心理療法と言われています。

不安障害(恐怖症性不安障害、パニック障害、全般性不安障害、強迫性障害など)に効果的と言われている一方で、クライアント自身が心から「治りたい」という意思を持つ事が大切で、この心構えが無いと治療の途中で脱落しやすいとも言われています。

森田療法とは?

あるがまま

現在の認知行動療法では、認知を変える事で感情や、心理的な苦痛を和らげて行こうという考えなのに対して、感情も含めて「あるがまま」受け入れる事が大切で今できる事を勇気を持って実施して行く事が大切だとしました。

こう書くと、行動療法と何が違うの?となりそうですが、そもそも、行動療法は心の問題ではなく、科学的に人間の行動を解明しようとした動きから出てきた心理学をベースにし、行動そのものを変えて行くものです。

森田療法は心理面を非常に重視して、あるがままを受け入れる大切さを言っています。なので、森田療法は認知行動療法とも以下の点で違います。

  1. 認知行動療法
    • 認知と行動を変える事で感情を変え、問題を解消する。
  2. 森田療法
    • 認知/感情を「あるがまま」に受け入れ、今できる事をやることで問題を解消する。

森田療法では認知を変えるのではなく、それに「とらわれる」のが良くない。不安を取り除こうとするとそれに心がとらわれてますます不安になる。そのような態度を精神交互作用と呼びました。

意識が向くことで感覚がより敏感になり、不安なりマイナスの感情が増幅して行くと言うものです。NLPが言う所の脳の焦点化や原因論と同じような事をすでに100年前に言っている事になります。

そのような精神交互作用はどうして起こるかというと、「かくあるべし」といったべき論に縛られているのも大きな原因になります。

不安はまっとうな感情で、それを取り除くことは出来ない。それと同じく、不安の表裏の関係にある欲求も取り除くことは出来ない。

心理的に不安障害になりやすい人は神経質性格として内向的であり、心配性であるといった弱い部分もあるが、完全主義者的で理想主義者であるなど、非常に強い生のエネルギーも持ち合わせている。

なので認知も感情も「あるがまま」に受け入れて、神経質な性格の人が持っている生きる事への欲望を引き出すことに集中する事が大切だ。というのが非常に大切な考えになります。

感情に関する法則

森田療法の感情に関する法則
  1. 感情はそのまま放任すれば山形の曲線をなしひとのぼりしてついには消失する。
  2. 感情はその衝動を満足すれば急に静まり消失する。
  3. 感情は同一の感覚に慣れれば、鈍くなり不感となる。
  4. 感情は、その刺激が継続して起こる時と注意を集中する時に強くなる。感情は新しい経験によってこれを体得し、反復によりますます養成される。
  5. 感情は、気分と同じで自分でコントロールできるものではなく、自然な反応として起こるもので、それを排除したり、自在に操れるものではないという事です。

神経症(不安障害)と森田療法〜公益財団法人メンタルヘルス岡本記念財団 (mental-health.org)より

感情は決して長続きするものではなく、仮にパニックになって、発作が起きてもそれはいずれ治まる。という事を認識することは非常に大切になります。

目的本位/恐怖突入

今日は気分がすぐれないし、不安だから出かけるのは止めよう。と考えるのは気分本位で、今日は買いたい物があるので外出しようと言うのが目的本位です。

気分本位は気分をあるがままを受け入れているようで、「感情」を無意識に重視し過ぎてしまいます。自分が「どう感じているか」にとらわれ、それを行動する時の判断軸にしてしまうのです。

本来の目的は何か、感情は有るがまま受け入れる。いやなら、嫌と感じているが、それで行動に影響が出ている限り感情にとらわれている。

恐怖突入とも言われています。恐怖はそこから逃れようとあせると、恐怖心はますますつのってくるものです。 例えば、恐ろしいままで歩いていると、恐怖心はそれだけで済みますが、恐ろしさのあまり走り出すと、さらに恐怖心は大きくなります。
したがって、恐怖心が生じれば、逃げずに踏みとどまり、むしろ恐怖の中に突入していく事が重要だという事です。

目的本位、恐怖突入の精神で行動して行けば、行動出来た事が自信になり、不安な感情も低減されて行きます。

「形」の重視

心はどうあれ、目に見える形、生活の形、パターンをまずは整えて行く事が大切としています。「外相整いて内相自ら熟す」です。

心の状態やあり方を「不問」にして、とりあえず日常生活を続ける過程で、自ずと心は治療に向かうという考えです。

「形」はその通り実施すれば一定の結果が得られるので、自分でも自信が付き、感情や認知にとらわれなくなって行きます。

森田療法では、心を直接操作しコントロールできるものだとは考えない。心理現象を自然現象の一つのようにとらえ、直接に心をコントロールすることは不可能であると森田療法は説く。

「心や感情は天気のようなもの」という標語に端的にそれが示されている。心という実体の何らかの傷を直接扱おうという発想で心に向かおうとするのではなく、心の状態や心の在り方を不問にして、とりあえず日常生活を続ける過程で自ずと心は治療に向かっていくと言う態度である。

このように自ずと心は治療に向かうという自然性が、森田療法を深い所で支えている人間観と世界観の特徴である。

森田療法と内観法 富山国際大学 大谷 孝行氏 より

森田療法の構成

従来、森田療法は入院治療が主でした。その場合、治療構成は4期にわかれています。

  1. 第一期:絶対臥褥期(日常生活から離れ整理活動以外は寝ているように促す)
  2. 第二期:軽作業期(睡眠時間を7~8時間とし、それ以外は軽作業を促す)
  3. 第三期:重作業期(睡眠時間以外は必ず何かを実施し少しずつ肉体的な負荷も増やす)
  4. 第四期:退院準備期(日常生活に戻れるように生活リズムを整える。)

外来の場合、心理指導(あるがまま受け入れる。感情は長続きしない。発作も収まる)を中心に、行動を促していくのが一般的なようです。

他にも、生活発見の会、と呼ばれる自助グループも全国に有るようです。

森田療法の仏教的な(日本的な)側面

森田療法ではそもそも心を実態視することは無い。「心」や「我」にこだわり執着するから「とらわれ」に陥る。そこで森田療法においてはとにかく注意を現実生活に向けて行くように指導する。

自らが創始した精神療法や自己洞察法の社会的普及を願って、あえて宗教との親近性を前面に出さなかった面が有るが、森田が自分の療法を説明するために禅語を頻繁に使用している事は軽視できない事実です。

「心」や「我」を実態視しないという態度は、突き詰めれば我々日本人が暗黙のうちに前提としている仏教的な世界観である「諸行無常」「諸法無我」を代弁しているとみる事も可能だと思われる。

森田療法と内観法 富山国際大学 大谷 孝行氏 より

森田療法は上記のように、禅を起源としたマインドフルネスやACTにも通じるところが有るのも、100年近く経過して今なお有効な心理療法とされている所だと感じています。

目標に向かって突き進む、といったアグレッシブな姿勢も大切ですが、森田療法の言うように、有るがまま受け入れ、今できる事を勇気をもって進めると言う考えは、人生を送るうえで非常に大切な考え方だと感じています。

まとめ

  1. 心には不安な感情(死)と欲求(生)の両方を持っており、表裏一体となり、どちらも取り除けない物である。
  2. 不安な感情を取り除こうとすると逆にとらわれてしまい、ますます、不安を感じるようになる。
  3. 不安を抱えやすい神経質な性格の人は、内向的で心配性の弱い面もあるが、完全主義者、理想主義者といった、非常に強い生のエネルギーも持ち合わせている。
  4. 感情はそのまま放任すれば山形の曲線をなしひとのぼりしてついには消失する。その衝動を満足すれば急に静まり消失する。
  5. 認知も感情も「あるがまま」に受け入れて、神経質な性格の人が持っている生きる事への欲望を引き出すことに集中する事が大切である
  6. 「外相整いて内相自ら熟す」今できる事を行っていく事が大切

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