設計の段階で、設計者、開発者がコストを見積もる方法。

本格検証/設計審査

アイデアの段階では、コスト見積もりは、開発者が行うしかありません。なぜらな、この段階では、アイデアレベルなので、シナリオ次第でコストはいくらでも変わってきます。シナリオをしっかり考えるべき開発者がコスト見積もりも行う必要が有ります。

開発者がコストを見積もるには、製造などから必要な情報をベースにして、自分が考えたシナリオでコスト見積もりを行う事になります。

従って、最低限の経理知識と、しっかりしたシナリオを立てる事が大切になります。

変動費と固定費

製造コスト、製造原価とも言われますが、製品を作るのにかかる費用です。

製造原価=変動費+固定費

固定費と変動費
  1. 変動費
    • 生産数量に比例して増減する費用、原材料や購入部品等
  2. 固定費
    • 生産数にかかわらず、一定額発生する費用。装置(減価償却費)、地代家賃等

変動費

生産数量に比例して増えるので、製品1個当たり、比例費はいくらかかるのか?といった観点で考える事が大切です。原単位という言い方をします。

副資材や、原材料の購入単価で比べても、製品一個あたりに使用する量が変われば、費用も変わってきます。原単位は、すべて、製品1個当たりで比較する事で適切な比較が出来る事になります。

ある機種は他の機種に比べて原単位が高いのは何故か?他の工場と比較して何故、原単位が違うのか?等、製造主催のコスト会議に参加すると格好の議論の対象になります。

また、製品1個を作るのにかかるのが比例費なので、不良品であっても、良品であっても同じだけ変動費はかかります。実際にお金が回収できるのは良品になりますので、歩留まり(良品率)が低くなれば、それに比例して、変動(比例)費は高くなります。

歩留まりは、製品の不良、良品、だけではなく、原材料でも、使用できない部分が出てくれば、その分、当然、変動費は高くなります。

変動費の歩留まりの向上や材料の利用効率向上など、製造が使い込んで行ったり、改善活動で改善される余地はありますが、そもそも、製品を作る上での原材料や購入部品などは設計で決まります。

固定費

開発が原価見積もりをする場合、真っ先に気にするのは、減価償却費です。減価償却は、装置など、使用できる期間を見積もり、その期間で装置費用を負担して行く(償却して行く)、といった単純な経理処理上の数字の事です。

昔は、生産設備の減価償却は5年、あるいは10年と言われていましたが、コスト試算する時は、最近は技術の進歩も早く、1年、あるいは、3年で考えるべきと言われることが多いです。(会社や業種によるのかもしれません)

新に装置を購入する必要がある場合は、償却が始まると、その分、固定費が高くなります。しかし、固定費は生産数量に関係なく一定の金額がかかるので、一個製品を作るのも、100個製品を作るのも、結局、例えば、100円といった金額がかかります。

一個の製品で100円の固定費を回収(元を取る)と考えれば、100円の原価になりますが、100個の製品で回収しようとすれば1円の原価、つまり、それだけ安くすることが出来ます。

なので、通常、固定費を下げるには、生産性を上げて、単位時間あたり、数多く製品が作れる、スループットを上げる事が非常に大切になります。

歩留まりも良い方が、固定費は下がりますが、結局、単位時間当たりの良品が作れる能力が影響しますので、歩留まりが仮に低くても、それ以上に生産性が高ければ、固定費は下がることになります。

作りにくい製品を設計すると当然生産性は上がりませんので、作りやすさを考慮した設計開発が必要になります。

損益分岐点

購入品や、生産技術の場合、開発が実施するコスト見積もりであれば、原単位歩留まり生産性(スループット)を見積もれば大体、事足りると思います。

しかし、製品を開発する場合には、実際にお客様に買っていただかないと、原価を回収できません。営業と目標コストを設定する際、必ず、数量とセットになった話になるので、損益分岐点の考えは開発者も理解しておく事が大切になります。

損益分岐点図表

製品の数量が少ないと、実は売ると損失が出ます。ちょうど、損失が出なくなる数量(売上)を損益分岐点と呼びます。(実際には、一般管理費が乗ってくるので、損益分岐点では赤字ですが、、、、)

この場合は、売って損するだけです。なので、必ず、粗利がしっかり確保でるように、価格設定、数量設定を行う必要が出て来ます。

製品設計と工程設計

コストダウン設計に関してはマンパワーの制限などで、商品設計、工程設計、と分ける傾向がみられますが、本来、商品設計と工程設計は不可分です。

実際に作りやすい商品を作らないとコストダウンは到底不可能ですし、品質/機能を実現するのに適切な工程設計をする必要が有ります。

担当が商品設計と工程設計に分かれるのは仕方がない面は有りますが、開発リーダーが適切に指導し、まとめ上げることが大切になると思います。

まとめ

  1. コスト目標は開発者が開発シナリオをベースに、製造からコスト情報を入手し目標コストを設定する必要がある。
  2. 開発シナリオを考えるにも、目標コストを見積もるにも、変動費、固定費、損益分岐点などの最低限の経理上の知識が必要
  3. 商品設計と工程設計は不可分。担当が分かれるのは致し方がない所があるが、リーダーが適切に指導し、まとめることが大切
  4. 開発のリーダーは、シナリオの確からしさ(理由、根拠)、コスト見積もりの確からしさを検証し設計/開発部門の少人数で、素早くまとめ上げる事が大切

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