QCD(品質/コスト/納期)について
改めて言うまでもなく非常に大切な項目です。すでに、デザインレビューと本格検証の記事で大切と思われることを紹介しました。
- 開発コンセプトに基づいて量産性の評価を行う。
- 他部署と協議をするための原案を作成する。
- 目標に達しない場合には対策を考える必要はがある。コスト/品質/納期は連動するところがあるので新しい考え方を導入する必要が出てくる。
- 開発責任者が関係者を招集して別途対応を協議し、全体会議で報告する。その際に、設計審査の決裁者に相談することも大切。
この記事では、もう少し具体的にどうすれば良いのか紹介したいと思います。
QCDの基本的な考え
QCDは関係者の合意があれば問題にはなりません。
QCDも通常は品質一番と言われますが、状況によっては納期が最優先になったりもします。優先順位も合意事項です。
欲を言ってはキリがない事はみんな知っていますので、開発コンセプト、目標QCD、本格検証と順を追って合意して行くわけです。途中でハードルが上がることは良くある話ですが、そもそも合意されていた上でハードルが上がるのと、そうでないのでは大違いです。
品質は必然的に本格検証で進んでいきますが、開発が進んだ頃に、なんでこんなにコストがかかるんだ。あるいは、納期がかかるんだ、と後で揉めるのが一番の問題です。
QCDに限らず、見える化、共有化が大切ですが、QCDの案件は特にトップ層への情報の共有、相談が大切になってきます。「後で揉めそうなことは先に揉めておく」の考えが基本大切になると思います。
ただし、実際に検証してみないと分からないこともあり、その辺りの見極めは必要になります。
デザインレビューでのQCD
品質に関しては、開発目標、設計目標との対比になるので割愛します。コスト/納期に関しては、購入品の場合にはメーカーから見積もりを、社内のプロセス設計であればコスト試算を行います。
コスト試算は、正確には製造あるいは製造管理の方にお願いしなければなりませんが、この段階で通常は受けてもらえないので、開発部門が試算するしかありません。
設計開発部門でもコスト試算が出来る程度の経理的な知識は必修です。
固定費や変動費(比例費)、損益分岐点の考え方、原単位、これぐらいは最低必要かなと思います。ここでは説明しませんが使えるようにしておきましょう。
- プロセス設計の場合、製造からコスト情報をもらい、コスト試算を行います。
- その段階で、開発コンセプトで設定したコスト目標に到達しなければ、当然、見直しが必要です。
- コスト情報をもらう際に、製造の考えも担当者レベルで良いので聞いておく事は大切です。
- 関連部署と協議するにあたり、見積もり条件、コスト試算条件は明確にしておく事が大切です。
購入品の場合、見積もりの内訳や詳細を聞いても真実の姿は出て来ません。相見積もりをとるのが基本です。
関連部署と協議の上、開発計画書に落とし込む
この段階で、歩留まりを議論する人がいます。確かに歩留まりは大切ですが、本格検証する前に、予察試験の歩留まりを議論してもあまり意味が無いと思っています。
プロセス設計では、マージン評価、安定性、(ロバスト設計)について、現行との違いを示して議論する事は必要です。
なぜなら、歩留まりは開発、経験により向上していきます。ただ、マージン、安定性は設計の段階で解決しないと、後々まで問題になる事が多いからです。
管理に関しては、開発設計側からすると、そのぐらい、現場で対応できるだろうと思う事も、製造側では抵抗を示すことが多いです。しかも、自然解消することは稀です。他の量産性のファクター、例えば、他のラインへの横展開、装置的な制約などは、良く製造の意見を聞くべきと思っています。
本格検証でのQCD
本格検証で目標値に未達な場合には、基本、新しい考えが必要です。何故なら、QCDはそれぞれ連動していているから調整では済まないのが通常だからです。
優先順位は状況により変わります。例えば、梱包容器のような場合、容器が無いと製品が運べないので、納期が最優先になります。コストは一時的に無視無視(納入出来ない損失に比べたら少ない。)品質で問題が考えられる場合は人を派遣して、何か問題があれば、その場で対応する。等という事も実際にあります。
ですから、優先順位を確認し調整の範囲内で良ければそれでよいですが、通常は新しい考えを導入し改善して行く必要があります。
VA(価値分析)、VE(価値工学)を使った見直し
品質/機能の優先順位の見直し、設計開発にとどまらない代替方法の検討等コストダウンネタの検討を進める必要があります。
VA、VEの考え方を使って品質/機能とコストの両面で設計だけでなく、幅広くコストダウンネタを考えることが大切になります。
開発コンセプトを考える際に、価格は現状のままで、機能をアップするとか、VEの考えを導入しています。本格検証で、さらに検討が必要になれば見直すだけです。購入品であれば見積もりの再交渉するのは当然です。
VA・VEは量産品と開発品で区別するような記載がありますが、本格検証では、量産を前提とした開発なのでそのような議論をすること自体意味が無いと思います。
設計の所も、デザインレビューの頃と、開発が進んだ状態で違いが出てきているでしょうから、改めてコストダウンできる所が無いか見直す必要があります。
納期の見直し
ガンチャートの見直し、購入品の場合はメーカーを訪問し、対応を協議する。場合によっては、追加改善により、納期が更に遅れる場合も当然出て来ます。
トップ層(設計検証決裁者)への働きかけ
開発の規模にもよりますが、中小企業の場合、やはり社長さんの決裁が必要になるのではないでしょうか?
トップ層への報告は、問題点も含めた現状報告だけでなく、このまま行ったら、最終的に当初の計画に対してどうなるのか?対策を打った場合にはどうなると考えられるのか?といった形で報告し、最終的な姿の良いケース、悪いケース、両面でイメージしてもらえるような報告が親切かと思います。
また、少なくとも、決裁者には情報の共有ではなく、相談し、意見をもらっておく事が非常に大切です。
組織が大きくなると、関連部署のTOPといっても大勢いたりするので、上司に頼んだり、その部署のメンバーから説明してもらうなどすればよいと思います。
まとめ
- QCDは関係者の合意事項なので、常に見える化、情報の共有化を図る。
- 開発計画書にQCDを落とし込む際にの関係部署との協議は非常に大切なのでしっかり議論する。
- 本格検証で目標未達となった場合にはVA/VEの考え方を使って改善を考える。
- トップ(決裁者)には情報共有だけでなく、相談し、意向を確認しておく。
コメント