初めて特許調査をする方へ。特許調査する前に考えておくべき事を説明します。

特許戦略構築
  • 特許調査の目的を明確にする必要が有ります。特許調査の目的によって検索の切り口が変わってくるからです。
  • 切り口とは具体的には、調査に必要な調査対象、調査期間です。
  • 得られた情報はどうやってまとめるか?といった事を考えておく必要が有ります。明細書の二度読みを極力少なくするためです。

特許調査は、自分でやってみると分かりますが、関係ない特許(ノイズ)をいかに少なくし、見たい特許をいかに効率的に探すか?の戦いです。自分で検索する前は、どうして、こんな関係ない特許ばっかり入ってくるんだといつも不満に思っていました。

最近では、AI技術の導入も始まっています。日々進化していくことは間違いないでしょう。期待したいです。

今回は、目的別の特許調査の種類を説明し、次回以降、具体的な特許検索の方法、特許戦略の立て方を紹介して行きたいと思います。

技術情報としての調査

技術を大局的に把握したい。技術トレンドを押さえたい。というような場合の調査です。具体的には、以下のようなイメージです。

ネット:e-Patent Portal 特許MAPとは、から

ドローン関連の特許で、誰が、何時、出願したのかわかるMAPとなっています。

技術動向調査の注意点

競合他社の出願数の推移など、ピンポイントで検索できる物は良いですが、例えば、上記のようにドローン関連の技術かどうか分類するには明細書で確認する必要があります。

得られる結果の価値と、かかるコスト労力を比較してどのような調査を実施するか、あるいはしないのか決める必要があると思います。

参考情報

特許庁がホームページで特許出願技術動向調査をUPしてくれています。リンクを貼っておきましたが内容は非常に素晴らしく、これ以上のものは無いのではと思えるような内容です。

希望される分野が、扱われているか一度見てみることをお勧めします。

特許調査

先行例調査

公知内容を調査するのが目的ですから、対象は明細書全文、対象期間が不問となり、調査文献が多く、時間も取られがちになります。

この調査は、発明者が実施するのが望ましいと言われており、時間もかけられません。多少の漏れは目をつぶりましょう。

私がやっていた先行例調査

定期的な特許調査を補う意味で「競合他社、関連会社+キーワード」で検索し、特許文献を見て、関係ありそうな特許で引用されている文献を引っ張る方法で行っていました。

競合他社が少ないのと、特殊な分野でしたので成り立っていたのかとも思いますが、1度トライされてから使えるか使えないか判断いただいても良いのでは、と思います。

侵害防止調査(クリアランス調査)

自社の商品が、他社の特許に抵触していないか確認するための調査です。対象は請求項、対象期間は20年(特許有効期間)となります。ここでは漏れが無いようにすることが大切で、必然的に、特許件数も増えます。

知財部をお持ちでしたら知財部に調査を依頼する。知財部をお持ちでなければ、調査会社や特許事務所に依頼する事をお勧めします。

特に、定期的に特許を確認し、先行例調査などで、特許MAPが完成していれば、毎回侵害防止調査をしなくても良いですが、特許MAPが無く、知財状況が不明な場合はやはり実施する方が安全です。

私の勤めている会社では通常は個々の技術で侵害防止調査はやりませんが、新しく外国に進出するような場合には、やはり調査会社などと組んで、一括してその国での侵害防止調査を行います。

調査を外注する時の注意点

自社技術の事を的確に説明し、良く分かってもらい、上がってきた結果が適切かどうか判断するのは当然依頼者側の仕事です。丸投げとはいきません。お互い協力して作っていく形になり、何度か打ち合わせをする必要があります。

また、知財業界では、自社技術の事(侵害の対象となる製品や方法)を「イ号」「イゴ」と呼びます。初めて聞いたときは「何語ですか?」と聞いてしまいました。

平気でイ号、イ号と口にする人がいますが、そういった意味です。

無効資料調査

ある特許を無効にするために、公知例を調査するもので、過去のすべての公知が対象になります。知財部員や、調査会社、特許事務所にお願いしましょう。無効資料は特許以外の資料が多く、調査する人の執念を感じることが多いです。

定期的な調査(SDI調査)

危ない特許は早く見つける事が大切です。その為には、やはり「特許分類」と「キーワード」を組み合わせて「検索式」を作り、定期的に確認する仕組み作りが大切です。

特許を確認する側の注意点

自社の技術が抵触しているかいないかを判断するのが最優先です。関係のない特許も多く含まれます。まじめに明細書を読んでいたらいくら時間があっても足りません。

請求項をまず開いて、自社の技術に関係のない文言が出てきたら、即座に切り捨て、危なそうな特許をまず選びましょう。

それをやらないと、特許がどんどんたまり、ますます面倒になります。「危なそうな」が大切です。危ないか否かの確認は改めて実施すれば良いです。

また、技術分野が複数にまたがるような特許もあります。幅広く判断できる方がいればよいですが、複数の部署で確認する事も大切になります。

特許MAP

特許MAPは各自わかりやすいようにまとめてもらえばよいです。私が作っている特許MAPを紹介します。参考にしていただけると有難いです。

年始、特許戦略を立てるために、特許MAPをまとめます。出願日基準で20年、ステータス、抵触しているか、Watchしていないと自社で改良した場合に引っ掛かる可能性があるかを色で分けます。

実際には、××特許の××はキーワードを入れます。ただ、このMAPは他の人が見ればやはりわからないので、明細を書いたリストと対応させます

これを競合他社、その他、で作成します。

パテント・インテグレーション レポート

また、企業、技術分野ごとの特許動向を調べられる、無料のウェブサービスに「パテント・インテグレーション レポート」というものがあります。
「パテント・インテグレーション レポート」は、無料で使えて面倒なユーザー登録不要なウェブサービスです。
最新の特許情報に基づく企業、技術分野ごとの特許動向を下の図のように簡単に調べることができます。

パテント・ランドスケープトヨタ自動車株式会社 特許情報・特許分析レポート(日本特許) (patent-i.com)より

まとめ

  • 特許調査の目的を明確にする必要が有ります。特許調査の目的によって検索の切り口が変わってくるからです。
  • 切り口とは具体的には、調査に必要な調査対象、調査期間です。
  • 得られた情報はどうやってまとめるか?といった事を考えておく必要が有ります。明細書の二度読みを極力少なくするためです。

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