先願主義である以上、特許は1日でも早く出願した方が有利です。
ならば、という事でアイデアの段階でも特許を出願した方が良いのでしょうか?
確かに、アイデアの段階でも特許要件を満たせば特許を取る事は可能です。アイデア段階の場合、実施可能要件をどう満たすか?という事がノウハウとしては有りますが、本質的な問題は、検討が進めば出願したアイデア通りとはならないのが通常で、そのような場合、アイデア特許が先願となり実際にとりたい特許の邪魔になってしまう。という事です。
一方、明細書を充実させたいので、発明が完成するまで出願出来ない。という方もいます。これでは明らかに遅いです。出願から1年以内であれば国内優先権を主張し出願内容を補正することは可能ですのでこの制度を最大限に活用する事を考えるべきだと思います。
アイデア特許
特許要件、記載要件、実施可能要件
主な特許要件は紹介済ですので参照ください。
アイデアの段階では、まだ、具体的な試作品も作っていない状態ですので、記載要件をどうやってクリヤーするかがポイントになります。
実施可能要件対策、予想実施例、仮想実施例
アイデアを具現化すると言えば、試作品の設計内容、プロトラインの設計内容を使って、予想出来る現象を予想実施例、仮想実施例として記載するんです。
予想されることと、実施したことを区別して記載するのです。実施したことは過去形で、予想したことは現在形か未来形で書くと言われています。予想したことは「○○することで××が可能になる」といった表現が多い様に思います。
- 実施可能要件は極端な話、実施例がなくても、審査官が実施できる。否定できないと思ってもらえれば問題ありません。
- しかしながら、予想実施例、実施形態だけであれば納得してもらえない可能性は当然高くなります。予察試験の結果やシミュレーションの結果等、記載可能なものは記載するようにしましょう。
- 出願後、1年間は、補足、補充が可能です。実施例はその1年間を有効に利用する事が非常に大切だと思います。
実施例を用いなくても、当業者が明細書及び図面の記載並びに出願時の技術常識に基づいて発明を実施できるように発明の詳細な説明を記載することができる場合は、実施例の記載は必要ではない。
02_0101.pdf (jpo.go.jp)より抜粋
出願のタイミングはいつが良い?
アイデア特許の問題点
実際にプロト機や試作品を通して、具体的な形態が変わってきた場合、アイデア特許は本当に出したい特許の先願になり邪魔にしかなりません。
形態が変わる場合以外に、検証を進めたら、色々な事情で事業化を断念するような場合は出願が無駄になります。
他社の後願排除のために残しておくといった考えもありますが、実際に他社が実施しなければ、誰にも使われない無意味な特許になります。自分が断念したからには何らかの問題があったはずで、他社には改良特許のヒントを与えるだけで、良いことは無いと思っています。
国内優先はあくまで、出願済の発明に対する補正、補充ですので、新規事項の追加は許されません。アイデア特許で記載した実施形態では問題があったので、新しい実施形態を追加し、請求項を書き換えるようなことは出来ません。
場合によっては、アイデア特許がそのまま使える場合もあるでしょう。その場合は先願主義をとっている以上、メリットは大きいです。しかし、普通に考えて、そういったケースは稀なのではないでしょうか?
アイデア特許を出願することを完全に否定するつもりは有りませんが、公開前に取り下げることになる可能性が高く、特許出願にかかる費用を無駄にする覚悟は必要かと思います。
結局、特許出願はいつのタイミングが良いのか
発明の形が見えてきて、補正/補充で完成できそうなタイミングで極力早くとしか言いようがないような気がします。
優先権を主張できるのが1年以内ですので、発明をオープンにする予定の1年前に発明の完成度をみて判断する。完全ではなく、部分的にでも優先権を認めてもらえるので、時期的な物を考慮し、1年前にはまずは出してみる。というのも一つの考え方だとも思います。
勿論、それより前に出してももちろん問題ありませんが、完成度は低いでしょうから、先々、無駄になる可能性が高くなるだけです。
現実的、(多くの場合?)はデザインレビューの中で特許についても議論し、お客様に試作品を提出する前までに出願する。といった事になりがちだと思います。
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