特許の早期審査、スーパー早期審査のメリット、デメリットは?

特許戦略構築

特許を出願した以上、審査請求をするのが基本です。審査請求しないのなら公開されるだけで意味がありません。それなら初めから秘匿にする方が懸命のように思います。

例外として、単に公知公用にしたいので公開するといった考えもありますがその為に特許を新たに出願するのは非常に非効率な方法と言えます。

しかしながら、特許成立には時間がかかるため、すぐに権利を行使したいという方向けに早期審査制度やスーパー審査制度などもあります。しかし、審査を早める事にはメリットもデメリットもあります。

結論から先に言えば、

すぐに権利行使したい。という方には早期審査もお勧めです。公開前に1次通知も届きますので特許戦略を再構築できます。

しかし、特許権はいつ獲得しても、有効期間は出願日から20年で同じです。

目先、特許権を行使する予定がないのであれば、早期審査制度、スーパー早期審査制度は使用せず、じっくり特許を育てる事をお勧めいたします。

この後、解説していきます。

特許は成立までに時間がかかる。

特許は出願しただけでは審査してもらえません。出願したら3年以内に審査請求を行う必要があります。3年以内ならいつでも良いです。

しかし、審査請求をしてから、審査官からの何らかの通知が行われるまでの平均期間は、9.5か月(2019年)です。(初めてだったらここを読む~特許出願のいろは~ | 経済産業省 特許庁 (jpo.go.jp)より)

ここで、何も拒絶理由がなく、出願側でも補正することがなければ特許は成立しますが、早くても審査請求後1年近く特許成立にはかかることになります。

一方、通常は何らかの拒絶理由通知書を受け取ることになり、特許庁とのやり取りが発生するのが通常であり、私のイメージでは審査請求後、特許が成立するのは約2年といったイメージを持っています。

早期審査制度/スーパー審査制度について

特許庁H.P 審査(特許) | 経済産業省 特許庁 (jpo.go.jp)より

早期審査、スーパー早期審査とも適応を受ける要件が有りますが、いずれも or 条件ですので上記のフローが分かりやすいです。詳細は特許庁のHPを参照ください。

結局、どのくらい早く審査されるの?

早期審査をするメリットは?

権利行使をとにかく早くしたい。

特許は成立しないと特許権は得られませんから、審査を早くしたい理由は、現実に自分の製品や技術が他社に模倣されている場合でしょう。早く特許権を得て、特許権を行使したい場合です。

他にも特許権を使ってライセンス契約を考えるような場合には早期審査は有効かと思います。

特許成立後の模倣品をおさえられる

勿論、特許侵害で争う場合にはお金もかかりますし、お互い労力がかかるのとこちらの思い通りにいかないことも考えられます。早くに特許訴訟で明確にできれば、その後の模倣をおさえられるといったメリットは考えられます。

特許をPR材料としたい場合

また、特許を取得したことをPR材料として使いたい場合には早期審査のメリットは考えられます。

最大のメリットは公開前に1次通知が来る

通常出願でも、出願と同時に審査請求を行えば、特許が公開される前に特許査定や拒絶通知理由が公開前に届くことも期待できますが、早期審査やスーパー早期審査を行えば確実に特許査定や拒絶通知理由は公開前に届くことになります。

従って公開前に特許に出来るかどうかの目途が得られるので方針を再検討することが出来ます。特許が公開されてしまうと、その特許自体が先願となり、その後の特許出願の邪魔になる場合が有ります。

ところが、公開前に特許を取り下げると、あたかも出願自体がなかったかのように取り扱ってもらえます。

相手が、自分の特許を侵害していると思っても、実はあなたが他社の特許を侵害していて訴えられる立場かもしれません。その場合も、秘密裏に明確になり早めに対応できるようになります。

拒絶理由通知の内容を考慮し、新規事項を盛り込んで特許を出し直しても、一回取り下げた特許を先願としてひかれることは有りません。

早期審査のデメリットは?

国内優先権がほとんど利用できない

出願してから1年以内なら補充して特許をとり、内容を補強することが出来ます。しなしながら、早期審査をお願いした場合、1年経たずに白黒はっきりすることになるので国内優先権を利用して特許を補強するといった事は難しくなります。

白黒が早期に明快になるので他社にとっては対策しやすくなる。

特許内容が明確になる。という事は、他社から見れば早期に特許内容が明確になるので対策が立てやすいとも言えます。

通常、公開特許で抵触している場合、要注意特許としてモニターしていますが、どのような形で特許になるかわからないので、広範囲(明細書の範囲)で対応を考えなければなりません。しかし、特許として成立してしまうと白黒はっきりします。特許の権利範囲も明確になりますので相手にも対応方針が立てやすくなります。

ある意味、特許が相手に脅威を与えるのは出願中の状態とも言えます。

社会情勢の変化、自社の変化に対応できない

特許は出願後3年以内に審査請求をすればOKで、1年以内であれば補正も可能です。つまり、時間が経過するに伴う状況の変化を反映させることが可能です。

つまり、出願する時点で、明確にも模倣されているなどの特許権を行使しようといった予定がない場合には、時間の経過とともに、状況の変化を踏まえ、特許をどう扱うのがよいのかじっくり考える事も可能になります。

特許権を行使する予定が無い場合には、早期審査やスーパー早期審査はメリットはほとんどないと思います。

特許は早くとっても特許権の有効期間は20年で変わらない。

特許権を早く行使できるのがメリットのように感じるでしょうが実際には特許権は成立した場合、出願から20年間と出願日まで戻って有効(遡及)としてもらえます。

ですので、早く特許権を獲得しても、審査請求の3年以内に審査請求し出願から5年近くかけて特許権を得えても、特許権の有効期間は20年で変わりません。

そう考えると、早期に特許権を得るメリットは思いの他少ないのではないでしょうか?

まとめ

すぐに権利行使したい。という方には早期審査もお勧めです。公開前に1次通知も届きますので特許戦略を再構築できます。

しかしながら、社会的な情勢、自社の情勢も見極めるための時間的な余裕はなくなり、国内優先を主張する期間もほとんどなくなってしまいます。

特許権はいつ獲得しても、有効期間は出願日から20年で同じです。

目先、特許権を行使する予定がないのであれば、早期審査制度、スーパー早期審査制度は使用せず、じっくり特許を育てる事をお勧めいたします。

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