動機とは、人が何かを心に決めたり、行動を起こす直接的な原因の事です。なので、動機がうまく働くと楽しさや面白さにつながり、生きる喜びを感じる事にもつながります。
他者と仲良くなりたい「親和動機」
所属欲求
右の図は有名なマズローの欲求5段階を示したものです。
生理的な欲求や安全欲求が確保出来たら、次に来るのは社会的欲求です。
社会的な欲求は所属欲求、愛情欲求、との呼ばれ友人や家族、会社、世の中から受け入れられたい。という欲求です。
人間は哺乳類に属します。哺乳類の多くは群れを作って暮らします。その哺乳類に共通する脳の働きが「愛、仲間、群れ」の有無を感知する哺乳類脳と呼ばれる大脳辺縁系です。
私たちは社会から必要とされ社会へ「所属」し、家族と仲良く暮らし家庭に「所属」している時にだけ、幸せを感じ、大脳辺縁系がゆったりとくつろぎます。
すると、ようやく人間の理性を司る人間脳と呼ばれる大脳新皮質が動き出します。逆に、所属できないと感じると大脳辺縁系が活性化し、大脳新皮質の活動も制限されてしまいます。
つまり、職場で高い実績を上げ、生産性を高めるためには、大脳新皮質の活動の前提となる大脳辺縁系を穏やかに緩める必要が有ります。
それこそが、googleが提唱している「心理的安全性」なのです。
コーチングより大切なカウンセリングの技術 小倉 広 日本経済新聞出版 より
親和動機
人間は所属欲求を満たすために、自分の味方になってくれる人に近寄って、好意を交わしたいと言う欲求が生じます。この欲求を満たすために「親和動機」というものが働いていると言われています。
親和動機は不安傾向が強い場合に高まると言われています。自然災害などの不安が高まるような状況では、人が自然に集団を作り、助け合うのも親和動機の影響と考えられています。
勝負に勝つか負けるかという不安を共有する団体スポーツの結束の固さも親和動機に強く影響されていると言われています。
親和動機が教えてくれること
逆の言い方をすれば、不安が高まった時は、仲間を作る事も大切だ。という事を示していると思っています。
例えば、会社の人間関係で悩んでいた場合、その悩みを解消するには一般的に言ってかなり困難です。それよりも、自分の事を理解してくれる、受容、共感してくれる人が一人いればそれだけで十分気が楽になります。
人間関係の悩みを解決しようと頑張る事が駄目だ、という事ではありません。仲間を増やすことも大切だと思います。
成功を恐れる「成功回避動機」
私たちは成功を強く願い、達成感という充実した感覚を得るために努力する反面、成功を恐れる「成功回避動機」があると言われています。
自分の成功がネガティブな結果をもたらすことに対し恐れの感情を抱き、成功を避ける傾向。例えば社会的成功による地位や栄誉や資産の獲得によって周囲から受ける嫉妬を回避するため、成功そのものを避けることなどが挙げられます。
成功すると、これまで通りの日常や自由を失ってしまうことや、想像以上の負担があるのではないか、または出る杭は打たれる。という心理的ブレーキがかかることを指します。
成功回避動機に思う事
程度問題で何か新しい事を始めるにあたっては、楽しみ、期待感だけでなく、不安な面もあるのが普通なのではないでしょうか?不安な気持ちはあって当然、と受け止める事も大切だと思います。
また、成功回避動機は。自分の人生で大切だと思っている物、価値観を改めて考えさせてくれているとも思います?決してマイナスの面だけではないように思います。
しかし、無意識に成功回避に悩ませられるような場合、実力は有るのに全力で前進しようとしない人の心にはこの「成功回避動機」が潜んでいるかもしれません。
成功する事の恐れを感じていないか自問自答してみましょう。
また、自己否定の思いが強い人はそれそれで、生きずらい部分は有るでしょう。このブログでも何度かお話しているように自分の考え方が歪んでいないか?凝り固まっていないか?よく向き合う事が大切になってくると思います。
生きている喜びを最大に味わう「達成動機」
やる気の強さの方程式
私たちは何かを成し遂げたいと考えた時「達成動機」を強く抱くと言われています。
「達成動機づけモデル」を打ち立てた心理学者のジョン・アトキンソンは成功に近づきたい気持ちと、失敗を避けたい気持ちの割合に着目しました
達成動機=成功動機-失敗回避動機
人は成功したいという思いが強く、失敗するリスクを低く見積もると、達成動機は大きくなりやる気が強くなることになります。
成功を強く願うには、成功した時の姿をありありと想像し、やりたい。と思う事が大切になります。失敗回避は、どれだけ失敗を前向きな物と考えられるかによるでしょう。
失敗は成功の母、等とも言われますが、実際、失敗すれば何らかのマイナスの影響は出るものです。
そのリスクを背負う覚悟を固め、そのリスクが自分で背負えると思える程度まで、実際にリスクを少なくすることも大切だと思っています。
理想的な成功確率
同じく、アトキンソンらが行った実験からどのくらいの確率で成功すると考えているかが大切な事が分かりました。
アトキンソンは小学生たちを集め輪投げをさせ、実験を行いました。輪投げをする前に、成功すると思う距離と失敗すると思う距離を聞き、どこから投げるかは自分で決めるように言いました。
子どもたちが一番多く投げたのは中間。半分の確率で成功すると思われる場所だったとの事です。
(やる気を出すにはどうしたらいいの?~アトキンソンのやる気を引き出す方程式より~ | Habi*do(ハビドゥ) (habi-do.com)より引用)
「成功動機」が強い人は、成功確率が50%程度の目標設定で、もっともモチベーションが高まります。
そのため、やる気を引き出すには、「成功するかどうかわからないけれど努力すれば成功する確率はある」くらいの目標設定が効果的です。達成同期が強い人は、「達成したい」という思いが強いため、自分の努力次第で到達できそうな目標を立てることでやる気が引き出されます。
「失敗回避動機」が強い人は、成功確率がかなり高いか、かなり低い場合に積極的に取り組む傾向があります。
確実に成功するとわかっているか、もしくは自分の能力では達成が困難なことが明らかな場合です。成功確率が50%程度の場合には、もっとも達成への取り組みが消極的になります。「失敗回避動機」が強い人は失敗の原因は自分に能力がないからだと考える傾向にあります。そのため、能力がないことが露呈する確率が低い目標の方が取り組みやすくなるのです。
より効果的にやる気を引き出すために、考え方の傾向によって目標設定の仕方を変えてみるのもいいかもしれません。
達成動機理論を活用した目標設定をする | チームの可能性を広げるストーリーやエンゲージメントの事例が集まるメディア「DIO」 | 組織改善するならエンゲージメントサーベイ【Wevox】より
失敗回避動機が強いとそもそも、達成動機は小さくなります。
前述したようにリスクを背負う覚悟を固め、そのリスクが自分で背負えると思える程度まで、実際にリスクを少なくする。そのうえで成功確率が50%程度と思える目標を定めて行くのが良いと思います。
防衛的悲観主義
非常にやる気にあふれている人で、実は、成功を達成するのではなく、失敗を回避することに非常にやりがいを見つけるタイプの人もいます。
準備を万全に進めるタイプで、高いパフォ―マンスを示す人も多いです。
まとめ
- 親和動機
- 人間が持っている「所属欲求」を満たすために他者と仲良くなりたい。という動機です。不安な時程強く働くと言われています。
- 人との人間関係で悩んでいるような場合、人間関係を改善しようとすることも大切ですが、仲間を見つける事も大切だと思います。
- 成功回避動機
- 成功することを恐れ、心にブレーキがかかると言うものです。
- 自分が本当に大切と思っているものが何なんのか教えてくれている。とも考えられますが、認知が歪んでいるのかもしれません。
- 自分自身の考えに向き合って自問自答することが大切になると思います。
- 達成動機
- 成功する姿をありありと思い浮かべ、失敗のリスクを十分に覚悟し対策を打って行く事が大切になる。
- 一方で、内発的にやる気になっている人では、失敗のリスクを減らすことにやりがいを見出す人もいる。(防衛的悲観主義)
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