ISO9001は要求事項を纏めただけでやり方は教えてもらえません。やり方が間違っていると余計な作業やお金が出て行くのに品質はまったく改善しない。といった事になりかねません。
ISOの要求事項は当たり前の事しか書かれていませんがポイントを非常にうまくまとめていると思います。認証を取る必要が有るか否かについてはコメント致しかねますが、マネージメントシステムを作り、改善して行きながら使えるものにすることはやはり大切だと思います。
無理せず、実態に合わせた範囲でどこまでできるか考えるのが大切だと思っています。
ISOとは?
ISO9001は品質マネージメントの国際規格で、他にもISO14001(環境マネージメントの国際規格)やISO45001(労働安全衛生の国際規格)等色々あります。
認定を取得するには、事業規模にもよるようで従業員が30人程度の会社でも認定には100万円以上のお金がかかり、認定後も維持するのに50万円~100万円近くのお金が毎年かかるようです。
それだけのお金をかけて認定を取る必要があるか、決められるのは社長さんしかいらっしゃらないと思いますが、その為にはISOをよく理解しそれだけの価値が有るかどうかよく考える必要があると思います。
お客様によっては、ISO認証を取っていないと商売相手として認めないお客様を相手とするなら認証はやはり必要でしょう。(そんなお客様がいるかどうかは申し訳ありません。知りません)
認証を取る事で信頼される、PRに使えるとお考えなのであれば、その辺りは私には分かりません。私の個人的な経験から言えば、ISOの認定を取っているかどうかと、品質やクレーム対応が良いかどうかは関係が無いと思っています。容器を作っていただくメーカーさんを選ぶのにISOを取得しているか、否かを気にしたことは有りません。
強いて言うとすれば、こちらの要求している事がISOの要求事項と同じである場合、こちらが詳しく説明しなくても理解してもらえて話が早いと言うぐらいです。
ISOは要求事項が有るだけ。どう使いこなすかはユーザー次第。
要求事項はポイントをついており、非常に参考になりますが、置かれた状況は、千差万別なのでまさしく、自分で有効な使い方にしないと機能しません。
書類だけ、審査だけで表面上のシステムになってしまっては、余計な仕事も増え、作業負荷も増え、費用もかかるといったマイナスの面が大きくなります。ISOが問題なのではなく、その使い方次第。という事です。
また、認証を取るかどうかは別にして、QMSに準じた社内システムを構築することは必要で非常に大切です。ISOの勉強をされることは非常に有効ですのでお勧めします。
日本のISOの認定機関であるJQA,一般社団法人、日本品質保証機構も無料、有料の講習会を開催しているようですので興味のある方は検索ください。
ISO9001:2015の要求事項
対訳 ISO 9001:2015(JIS Q 9001:2015) 品質マネジメントの国際規格[ポケット版]、品質マネジメントシステム規格国内委員会監修、日本規格協会 編
国内規格なので英語て書かれた規格を日本語に訳したポケット版の本です。おそらくISOの認定を受けている所は必ず持っているのではないか?と思います。
細かな解説はないので、日本語を読んでも良く分からないことが多いですが、その場合は個別の解説書などを参照すれば良いと思います。
ISO9001の7原則
ISO9001は要求事項は良く考えたら当たり前の事しか言っていません。7原則と言われていますが一般的に言われている7原則は私にはあまり実態を表しているようには思えません。
私なりに理解している7原則を紹介します。
- お客様や利害関係者の要求事項は何でしょう?明確にしましょう。
- その為に必要な品質方針、品質目標を設定し、浸透させましょう。
- それを満足させるために何が出来るか考え計画し、実行しましょう。実行したら、結果がどうだったのか評価し、更なる改善を目指しましょう。(PDCAを回す)
- 確実に実行できるように責任と権限、手順、コミュニケーションの方法を決めておきましょう
- その為にサポートすべき資源(人/物/方法)は常に状況を把握し、いつでも使えるように整備しましょう。
- リスクや好機は予め特定し対応を検討し、結果を常に評価しましょう。
- 不適合が発生した場合は速やかに処置し、原因を追究し再発防止を計りましょう。
ちなみに世間一般に言われている7原則を記載しておきます。(品質マネジメント7原則の内容とそれぞれの意味とは | ISOプロ (activation-service.jp)を参考に作成)
- 原則1.顧客重視
- 原則2.リーダーシップ:品質マネージメントシステムを構築し、実施し、有効性の改善を行う全ての責任を負います。
- 原則3.人々の積極的参加 :役割、権限、責任などを割り当てる
- 原則4.プロセスアプローチ
- 原則5.改善
- 原則6.客観的事実に基づく意思決定
- 原則7.関係性管理:利害関係者の要求事項を明確にし、変化を監視しレビューを行う。
PDCAはもう古い?
念のために補足すると、PDCAとはPlan→ Do→ Check→ Act(Action)のことで継続的な改善を進めて行く方法の事です。
最近、PDCAは時間がかかる、あるいは、前例主義に陥りやすいので時代遅れ、これからはOODA、Observe(観察)→Orient(状況判断、方針決定)→Decide(意思決定)→Action(行動・改善)とするネット記事を読みました。
私の個人的な意見としては、PDCAもOODAも両方大切で、比べられるものではない。PDCAは今も健在。と思っています。
そもそも、日々の仕事は皆さんもOODAを行っているのではないでしょうか?日々状況に応じて判断し行動しないとそもそも仕事は回らないはずです。
PDCAはもう少し長期的なスパンにたったサイクルで、日々はOODAで回し、PDCAは長期的に回していくイメージでおります。
仕事はどこかで振り返り、整理する必要が有ります。PDCAがその役割を担っています。PDCAをいかに早く回していくかの工夫は必要と思いますが、そもそもOODAとは違う物、比べられない物と思っています。
QMSを構築するには?
QMSを適用する組織を明確にする
意外に思われる方が多いと思いますがQMSをどの範囲で適応させるかに関しては、組織が決める事が可能です。主力商品に限定して関連する部署を明確にして組織を明確にすることも可能です。
例えば、営業部であれば、主力商品を扱う営業2課のみを対象とすることも可能です。
また、適用が不可能な要求事項は適用除外が出来ます。
例えば、お客様の設計された図面に基づいて部品加工を行うような事業では設計/開発はしていないのでそれに関する要求事項は適用できない。とすることが可能になります。
プロセスアプローチ
インプットとアウトプットを見直す
プロセスアプローチと呼んでいるようですが、仕事というのは必ずインプットが有り、それに何らかの機能を付加してアウトプットとする作業とも言えます。

この多くの業務プロセスの集合および連続が、企業活動であると言えます。
プロセスをどの単位まで細かくするかに関しては業務内容によっても違うでしょう。そこまで細かく記載して意味が有るのか?と常に考えながらプロセスをまとめて行くしかないように思います。
各仕事の全体の整合性を図る
なので自分の仕事のアウトプットが、後工程のインプットになっている必要が有ります。各プロセスの繋がりが明確で断絶が無い事が必要で全体の整合性を図る必要が有ります。
整合性を図った結果各々の仕事の役割が明確化されます。プロセスマップにまとめると分かりやすいです。自分の担当しているプロセスが必ずどこに当てはまるのか考え整理するのが良いです。

経営者の責任として資産の運用管理。製品実現、および、その結果を測定分析し、PDCAをマネージメントレビューなどを通して確実にする事を示しています。
下の図は日本規格協会のポケット版ISO9001からの引用です。

仕事に必要な物的資源、人的資源、運用方法、評価指標を決める。
仕事はインプットを受けて何らかの付加価値をアウトプットを生み出す作業ですが、それを確実に実施できるように、資源(物的/人的)、運用方法、評価指標を決める事になります。

PDCAが確実に機能するように仕組みを作る。
仕組みを作るとはすべてのプロセスについて、誰が、何に基づいて、何をするのか?を明確にする必要が有ります。
更にその結果を誰が責任を持ってレビューし、続いてどのようなアクションにつながっていくのか明確にすることです。
レビューに基づく改善活動には必ず資源の提供の要否が判断されている事が必要になります。
製品実現プロセス
私は開発の担当者、あるいはリーダーとしてISOと向き合ってきました。なので、製品実現プロセスについて、少し詳しく紹介いたします。
製品およびサービスに関する要求事項
法令や規制が要求する要求事項やスペック、あるいは、社内の要請事項などはわかりやすいですが、引き渡し後の要求事項や、お客様が明示しない製品やサービスが機能するための要求事項も明確にする必要が有ります。
お客様が明示しない製品やサービスが機能するための要求事項を明確にするのは簡単ではありません。具体的にどうすれば良いのか、以下の記事にまとめていますので、良ければ参照ください。
デザインレビュー/設計検証
設計/開発が目標通り進んでいるか、責任者、関係者を決めて、レビューすることが要求されています。
また、アウトプットとして、実際に量産で使えるような合否判定基準や、製品仕様などまとめる事が要求されています。
その辺りは分かりやすいですが、妥当性の確認というのが有ります。分かりずらいですが、量産で実際に使える事を量産前に確認しましょうという当たり前の事を言っています。
QCD(品質/コスト/納期)が成り立つか?、サンプル品をお客様に評価してもらって問題なかったか?等という事です。
設計の変更管理
変更に対してレビュー、検証および妥当性確認を適切に行い、その変更を実施する前に承認しなければならない。設計/開発の変更のレビューには、その変更が製品を構成する要素および既に引き渡されている製品に及ぼす影響の評価を含めなければならないとされています。
4M(装置、人、方法、材料)変更のシステムに乗っかり、開発要素が有るのであれば開発プロセスで処理するのが良いと思います。
まとめ
- ISO9001とは品質の確保のため何をするべきか要求事項を纏めた国際規格。どうすれば良いかは書いてません。
- やり方は個別に検討する必要が有り、やり方が不適切であれば、効果は期待できず、作業負荷の増加、費用負荷など、マイナスにもなりかねません
- ISOの要求事項自体は、当たり前の事が記載されていますが、非常にポイントをついていて有効です。認証を取る必要が有るか否かについてはコメント致しかねますが、マネージメントシステムを作り、改善して行きながら使えるものにすることはやはり大切だと思います。
- QMSを構築するには事業に合わせて適用範囲を決めたり特定の要求事項を適用除外とすることも可能です
- 具体的に構築するのにはプロセスアプローチが大切です
- 無理せず、実態に合わせた範囲でどこまでできるか考えるのが大切だと思っています。
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