お客様の声というのは一般的に抽象的です。なので、その要望は、具体的な設計品質に落とし込んでいく必要が有ります。その展開手法として、品質機能展開、QFD、が知られています。
しかし、この手法はお客様の声(VOC、Voice of Customer)を出発点としています。しかし、お客様はすべてを語ってくれません。
お客様がメーカーの場合、まずはコンセプトをお客様と協議しながら同時に要望事項を聞き出し、既存品との違いは何なのか具体的にして広く前広に協議することが大切です。
QFD 品質機能展開とは?
以下、上記サイトの抜粋になります。具体的な点数の計算方法は上記サイトには記載されていなかったので私の方で追記しています。
♦まず顧客はどのような品質を欲しているのか(要求品質)を拾い上げ階層構造にまとめ上げる。
実際にお客様の要請は、様々な表現で出てきます。同じような表現が出てくるので共通する要求事項でまとめ、具体的な品質特性と結びつけられるように階層化しておく事が大切になります。
♦次に顧客要求に対して技術的にどのような特性(品質特性)を考慮すべきかをまとめる
♦要求品質と品質特性の関係性を整理するために品質表を作成する。
要求品質と相関が強いと思う項目を◎、相関が有るものを〇、可能性が有るといった程度の物を△で示して、上記の品質表を完成させます
♦製品の品質をどのように企画するのか(企画品質)を設定し、要求品質ウエイトを計算する。
要求品質重要度とは、お客様がその要求品質をどのくらい大切だと思っているか。といった指標です。本来はお客様に評価いただくべきでしょうが、メーカー側で、協議、あるいは、エイや、で5段階で評価しましょう。
続いて、自社、他社の現状を5段階評価しましょう。
例えば一番上の「省エネ性に優れる」であれば、要求品質重要度は5点、自社は3点、他社は3~5点で他社に劣っているとの評価になります。
企画品質とはここでは、どれだけメーカーとして力を入れるかを数値化した物です。
ここでは、「省エネ性に優れる」はお客様が重要視しているにも関わらず、他社より劣っているので特に力を入れようという事で企画品質は5点。としています。
レベルアップ率はここで設定した企画品質、5点は自社の評価3点からどれだけアップさせなければならないか示したものです。ここでは5/3で1.67となります
セールスポイントはまさしく、この企画品質が達成出来たら売りになると思えるか?という事です。ここでは◎を1.5、〇を1.2と点数化しています。
絶対ウエイトは要求品質重要度(5点)×レベルアップ率(1.67)×セールスポイント(1.2)を掛け合わせたもので。「省エネに優れる」の絶対ウエイトは12.5となります。
要求品質ウエイトは絶対ウエイトの合計(37.0)の内、例えば「省エネに優れる」の絶対ウエイトの割合を示したもので12.5/37で33.8%になります。
♦品質特性ウエイトを計算し特に注力すべき品質特性は何かを明確にして設計品質に落とし込む
品質表で要求品質と品質特性の相関性を整理しましたが、ここでは◎を5点、〇を3点、△を1点とします。
要求品質重要度を相関性から重み付けを行い、品質特性の重要度を計算した物が品質特性重要度です。
具体的には、品質特性の効率は、「省エネ特性に優れる」が◎なので5点、それの「要求品質重要度」が5点なので、掛け合わせて(重み付け)25点。
同様に計算して「小水量運転可」は3点、「低振動」は5点、「低騒音」は9点となります。
合計して、25+3+5+9=42になり、効率の品質特性重要度は42となります。
同様に、要求品質ウエイトを相関性から重み付けを行ったのが品質特性ウエイトです。
例えば、この渦巻ポンプを開発するには、品質特性ウエイトが200点以上の「制振性」「剛性強度」「効率」を重点的に開発して行こう。という事になります。
QFD 品質機能展開の注意点
お客様はすべてを語らない
そもそもお客様の要望、原始データとも、生の声とも言われますが、お客様は基本的にすべてを語ってはくれません。
「狩野モデル」では「当たり前の品質」「一元的品質(機能品質)」「魅力的品質」が有ると言われます。
しかし、お客様の声は基本、機能品質に対する要求です。
魅力的品質
無くても困らない品質なので、有ったらいいなと思う事を色々な人が色々な事を言ってきます。B to Bの場合、その先のお客様の状況、業界のロードマップなど、色々な情報から、直接のお客様と未来について議論することでニーズを引き出すことが大切になります。
一元的品質(機能品質)
競合他社との比較なので分かりやすいので不満として出て来やすい事になります。
当たり前品質
「当たり前の品質」はお客様も当たり前だ!と思っているので表面に出て来ません。当たり前ですよね。(笑)しかし、当たり前の事が確実に出来る事は簡単ではなく、要望というよりは制約条件を明らかにすることが非常に大切になります。
ただし、お客様がメーカーの場合、制約条件はお客様も製品の事が良く分かっていないので、何が制約条件になるのか分からないのです。
従って、設計/開発者が実績のある既存品と何が違うのかを明確にして、お客様とどういった問題が起こる可能性が有るのか、協議をすることが必要になります。
つまり、制約条件を明確にするにはお客様の声を出発点とするだけでは抜けが有り、設計/開発のコンセプトを最初にしっかり組み立て、まずはコンセプトをお客様と協議しながら同時に要望事項を並行して引き出して行く事が大切になると感じています。
設計開発は何かを変更すると影響が色々な所に出て来ます。予想もしていなかったところに出てくることも良くあります。なので、既存品との違いは何なのか明確にして広く前広に協議することが大切です。
お客様ってだれ?
お客様を製品を買ってくれる人、と考えると製品に必要な情報は十分に集まりません。実際にはあなたが開発した製品の影響を受ける人すべてです。社内の後工程の要望はお客様の要望です。
関係者の要求品質をまとめると考えた方が良いでしょう。
私が実施していた品質機能展開方法
私は品質機能展開 QFD といった手法を知らずに設計/開発をしていました。QFDの手法は確かに要求品質を設計品質に落とし込むのに有効さ手法だと思われましたが、上記の注意点に関してどう扱えばよいのか私が調べたサイトや本には説明が有りませんでした。
参考までに、私が実施していた品質機能展開方法(ふせ方式)を紹介します。良ければ参照してください。
まとめ
- 品質機能展開、QDFはお客様の要求品質を設計品質に落とし込む手法
- お客様の声を出発点としているため、有益な情報を引き出すためには工夫が必要
- 特に当たり前と思われる基本的な機能を満たすための制約条件はお客様の声を出発点とするだけでは抜けが有る、
- 設計/開発のコンセプトを最初にしっかり組み立て、まずはコンセプトをお客様と協議しながら同時に要望事項を並行して引き出して行く事が大切になる。
- 既存品との違いは何なのか明確にして広く前広に協議することが大切になる。
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