品質マネージメントシステムを構築する上でやってはいけないのは実態が伴わないまま、システムだけISOの規格に合うように構築する事です。
そのような場合、実態が伴っていないので監査の前に書類だけ辻褄を合わせようとする非常に無駄な作業が発生します。
QMSを全く初めから構築するような場合、初めは商品や対象組織を狭くしてまずは出来る所から始めて行く事が大切になると思います。
まず、社内でモデルケースを構築し、形になったら他に展開して行く形をお勧めします。
ポイント1:QMSを適用する範囲を明確にする
意外に思われる方が多いと思いますがQMSをどの範囲で適応させるかに関しては、組織が決める事が可能です。主力商品に限定して関連する部署を明確にして組織を明確にすることも可能です。
例えば、営業部であれば、主力商品を扱う営業2課のみを対象とすることも可能です。
また、適用が不可能な要求事項は適用除外が出来ます。
例えば、お客様の設計された図面に基づいて部品加工を行うような事業では設計/開発はしていないのでそれに関する要求事項は適用できない。とすることが可能になります。
ポイント2:プロセスアプローチ
インプットとアウトプットを見直す
プロセスアプローチと呼んでいるようですが、仕事というのは必ずインプットが有り、それに何らかの機能を付加してアウトプットとする作業とも言えます。
この多くの業務プロセスの集合および連続が、企業活動であると言えます。簡単に言えばプロセスフローを作りましょうという事です。
プロセスをどの単位まで細かくするかに関しては業務内容によっても違うでしょう。そこまで細かく記載して意味が有るのか?と常に考えながらプロセスをまとめて行くしかないように思います。
各仕事の全体の整合性を図る
なので自分の仕事のアウトプットが、後工程のインプットになっている必要が有ります。各プロセスの繋がりが明確で断絶が無い事が必要で全体の整合性を図る必要が有ります。
下の図は日本規格協会のポケット版ISO9001からの引用です。
経営者の責任として資産の運用管理。製品実現、および、その結果を測定分析し、PDCAをマネージメントレビューなどを通して確実にする事を示しています。
上記のプロセスを基礎とした品質マネージメントシステムをよりブレイクダウンして各プロセスを下図のようにマネージメント、運用、支援毎にまとめ、各業務の関連性を整理すると分かり易いと思います。
ポイント3:仕事に必要な物的/人的資源、運用方法、評価指標を明確にする。
仕事はインプットを受けて何らかの付加価値をアウトプットを生み出す作業ですが、それを確実に実施できるように、資源(物的/人的)、運用方法、評価指標を明確にします。
ポイント4:PDCAが確実に機能するように仕組みを作る。
仕組みを作るとはすべてのプロセスについて、誰が、何に基づいて、何をするのか?を明確にする必要が有ります。
更にその結果を誰が責任を持ってレビューし、続いてどのようなアクションにつながっていくのか明確にすることです。
レビューに基づく改善活動には必ず資源の提供の要否が判断されている事が必要になります。
ポイント5:ISOの要求事項を満たしているか確認する
ISOの要求事項は色々ありますが、私なりに理解しているISO9001の7原則は以下のような項目にまとめられると思っています。各プロセスに応じての要求事項と照らし合わせて、現状、ISOの要求事項に対して、何が満たしていると言えるか考える事が大切です。
要求事項に対して、現状行っている事では不十分だからといってシステムや記録などをどんどん重くしたりして行く事が良くありますがそれはやめましょう。無駄な作業が増えるだけで何の得にもなりません。
ISOの要求事項は、言われてみれば当たり前の事しか言っていません。なので、普通に品質管理、品質保証活動をしていれば要求事項は満たしている事が多いです。ただ、それを明確にしていなかったり、担当者の裁量で運用しているだけなので説明できないだけで、最低限の事は実際にはやられているケースがほとんどです。
逆に言えば、当たり前の事が出来ていないのであればそれはそれで問題ですから改善するのは当然です。
品質を管理する上で現状の問題点をISOの要求事項から見直しシステムとして構築するのは意味が有るでしょう。
しかし一般的にISOの事務局を社内に設けると、その人たちはシステムを構築する事が目的になってきますので、実態よりも過剰な要求、細かな要求をしてくることが常です。
ISOの担当者は自分が無意味な仕事をすることに成るか否かは自分の説明能力にかかっていますので、過剰と思われるシステム構築、記録を要求された場合は徹底的に議論すべきです。頑張りましょう。
まとめ
- QMSを構築するには事業に合わせて適用範囲を決めたり特定の要求事項を適用除外とすることも可能です
- 具体的に構築するのにはプロセスフローを作り、各プロセス間の整合性やISOの要求事項を満たしているかの確認を進めて行く事になる。
- 無理せず、実態に合わせた範囲でどこまでできるか考えるのが大切です。そうしないと無駄な作業が増えるだけで何も良い事は有りません。
- ISOの要求事項は現状の品質管理の問題点をISOの要求事項から見直して行く事は大切です。
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